(1) ミトコンドリアの形質転換系は報告されていないので、ミトコンドリアの形質転換技術を開発することに挑戦することを目指した。イネBT型やLD型細胞質雄性不稔系統のミトコンドリアにはメインゲノムの他に、プラスミド様環状DNA(B1プラスミド; 2135 bp)が存在し、安定に保持されている。複製開始点を含み、自己増殖すると考えられる。本研究では、このB1プラスミドをミトコンドリア人工染色体(Mitochondrial Artificial Chromosome;略称 MAC)として利用する研究内容を計画した。本年度は、LD型細胞質雄性不稔系統に由来するB1プラスミドにGFP発現カセットを組み込み、大腸菌のミニサークルベクターテクノロジーを利用してミニサークルベクターにするためのベクターを構築した。 (2) 作成したMACをイネ細胞のミトコンドリアにパーティクルガンを用いて導入する予定であるが、通常のミトコンドリアは小さすぎるので、分裂関連遺伝子の発現を抑制して巨大化したミトコンドリアを持つ組換えイネを作成して利用することとした。シロイヌナズナにおいてミトコンドリア分裂因子ダイナミンDRP3Aのドミナントネガティブ変異型を導入すると、ミトコンドリアの分裂が阻害されて大きく(細長く)なることが報告されている(Fujimoto et al. 2004)。OsDRP3A(K63A)を(東京大学 有村慎一准教授より分譲)をLD型雄性不稔細胞質を持つLDRに遺伝子導入し形質転換体を得た。この形質転換体に(1)で作成したミニサークルベクターを導入し、人工染色体として機能するかを実験する材料準備が整った。
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