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2013 年度 実施状況報告書

遺伝子組換えによらない、幅広い植物種に適用できる新奇な形質転換系の開発

研究課題

研究課題/領域番号 25660002
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関富山大学

研究代表者

山田 恭司  富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (70200714)

研究分担者 山本 将之  富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 講師 (10456402)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワード形質転換 / 遺伝子サイレンシング / RNA干渉 / 異種間RNA干渉 / 長距離輸送RNA / 完全寄生性顕花植物 / ネナシカズラ / シロイヌナズナ
研究概要

宿主からネナシカズラへのRNA・タンパク質の長距離移動と移動後の機能を検証するための系を確立することに取り組んだ。
(1)タンパク質の移動と機能:①ネナシカズラの花成誘導因子遺伝子FTにタグ配列コード配列を連結した標識FT遺伝子を作製した。タグ標識FT遺伝子を師管伴細胞特異的プロモーターあるいは35Sプロモーターに連結し、それぞれをシロイヌナズナに導入し、形質転換体を得た。
(2)siRNAの移動と機能:①師管伴細胞特異的プロモーターにネナシカズラFTのへアピン遺伝子を連結し、シロイヌナズナに導入し、形質転換体を得た。FTのへアピン遺伝子導入植物にネナシカズラを寄生させ、siRNAの異種植物間移動およびネナシカズラ花成の阻害が起きるか検証中である。②ネナシカズラの寄生根形成関連遺伝子もしくはカルコン合成酵素遺伝子CHSのへアピン遺伝子を師管伴細胞特異的プロモーターに連結し、それぞれシロイヌナズナに導入し、形質転換体を選抜中である。
(3)mRNAの移動と機能:①シロイヌナズナにネナシカズラを寄生させた時、宿主mRNAのネナシカズラへの移動するかどうか、長距離移動が既知となっているGAI遺伝子に着目して検定した。その結果、シロイヌナズナからネナシカズラへのGAImRNAの移動は確認できなかった。②ネナシカズラのGAI相同遺伝子が単離できたので、そのmRNAが宿主植物へ移動するかについても調べた。その結果、ネナシカズラからシロイヌナズナへのGAImRNAの移動は確認できなかった。
ネナシカズラを介した宿主植物間におけるsiRNAの長距離輸送と機能を検証する系を確立するために、師管伴細胞特異的プロモーターに連結したゴマの遺伝子(CHIおよびYAB2) のへアピン遺伝子をそれぞれ別々に導入した形質転換シロイヌナズナを作出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在までに、タグ標識したFTタンパク質遺伝子を導入した形質転換シロイヌナズナ、ネナシカズラ遺伝子をサイレンシングするためのヘアピン遺伝子を導入した遺伝子導入シロイヌナズナなど、当初計画のとおりの遺伝子を導入したシロイヌナズナ形質転換体を作出することがほぼできている。すなわち、宿主植物(シロイヌナズナ)からネナシカズラへのRNA・タンパク質の長距離移動と移動後の機能を検証する系を確立することができたのである。この系によって、平成26年度に予定していた、宿主へ長距離移動したsiRNA・タンパク質の機能を検証することが可能なので、当初計画は「おおむね順調に進展している」と判断した。
ただし、シロイヌナズナからネナシカズラへのmRNAの長距離移動については、RNAの移動量は非常に少ないということを示唆するデータが得られたので、宿主植物からネナシカズラへの効率的なRNA移動ができるような実験系を実現する必要がある。そのために実験計画の一部変更を行なっている。

今後の研究の推進方策

平成25年度に作出した各種の遺伝子導入シロイヌナズナを用い、異種植物間を長距離移動したタンパク質やRNAが機能するかを調べるため、次の実験を行なう。
(1)シロイヌナズナからネナシカズラに長距離移動するタンパク質の機能解析:タグ標識FTを発現する遺伝子導入シロイヌナズナに対してネナシカズラを寄生させる。蛍光観察やウエスタンプロットにより、タンパク質の移動を確かめつつ、ネナシカズラに花成が誘導されるかどうかを観察する。(2)シロイヌナズナからネナシカズラに長距離移動するsiRNAの機能解析:ネナシカズラ遺伝子に対するへアピン遺伝子を師管伴細胞特異的に発現するシロイヌナズナに、ネナシカズラを寄生させる。へアピン遺伝子から作られるsiRNAの異種植物間の移動について調べるとともに、ネナシカズラの遺伝子発現がRNAiによって抑制されるかどうか検討する。(3)シロイヌナズナからネナシカズラに長距離移動するRNAの機能検定:GAIのドミナントネガティプ変異遺伝子を発現するシロイヌナズナ形質転換体を作製し、それに対してネナシカズラを寄生させる。宿主から移動した変異GAIのRNA・タンパク質がネナシカズラの中で機能するかどうかを調べる。(4)ネナシカズラを介した異種植物聞におけるsiRNAの長距離移動と機能:まず、ゴマのCHIもしくはYAB2のへアピン遺伝子を発現する遺伝子導入シロイヌナズナに対してネナシカズラを寄生させる。次に、寄生中のネナシカズラを第2の宿主であるゴマに寄生させ、ネナシカズラを介してsiRNAがシロイヌナズナからゴマに移動したかどうかを調べ、移動後のsiRNAによりゴマ遺伝子の発現が抑制されるかどうか検討する。
以上のような形質転換シロイヌナズナの系のほかに、実験の簡便性やRNAの移動効率を改善するためにウイルス誘導性の遺伝子サイレンシング法の導入についても進める。

次年度の研究費の使用計画

(1)タンパク質の長距離移動を検出するためのタグ標識タンパク質発現植物の作製において、タグ配列の種類を当初計画よりも増やしたため、タグ配列の検出を次年度にまとめて行なうように計画を変更した。そのため、タグ配列検出用の試薬類を次年度に購入することとした。(2)siRNAを発現する形質転換シロイヌナズナの作製において、当初計画よりも多くの種類の形質転換植物を作製したため、siRNAの検出を次年度にまとめて行なうように計画を変更した。そのため、siRNAの検出用の試薬類の購入を次年度に回した。(3)ウイルス誘導性遺伝子サイレンシング法の導入を進めるために必要となる試薬類を次年度に購入するように変更した。
研究代表者・研究分担者・大学院生、計3名の研究活動に必要な経費として総額1,807,129円(うち507,129円は繰越し分)を使用する。経費の内訳は、物品費1,707,129円および旅費100,000円である。
(1)物品費:すべて消耗品購入に当てる。①試薬類(一般試薬)105,000円、②酵素類(PCR用酵素をはじめとする酵素類)500,000円、③DNA合成(プライマーなどの合成)400,000円、④遺伝子解析キット類(遺伝子クローン化や遺伝子解析に用いるキット類)400,000円、⑤実験用機材(ガラス・プラスチック器具類)152,219円、⑥植物育成関連器材(植物育成用の土壌・器材など)150,000円。(2)旅費:すべて国内旅費に当てる。①成果発表旅費(本研究の成果を発表するために学会に参加する計画)、②研究打合せ旅費(新規技術導入打合せのため北海道大学に出張する計画)。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Effects of hypergravity stimulus on plobal gene expression during reproductive growth in Arabidopsis2014

    • 著者名/発表者名
      Tamaoki, D., Karahara, I., Nishiuchi, T., Wakasugu, T., Yamada, K., and Kamisaka, S.
    • 雑誌名

      Plant Biology

      巻: 16 ページ: 179-186

    • DOI

      10.1111/plb.12124

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Differential regulation of two types of monogalactosyldiacylglycerol synthase in membrane lipid remodeling under phosphate–limited conditions in sesame plant2013

    • 著者名/発表者名
      Shimojima, M., Watanabe, T., Madoka, Y., Koizumi, R., Yamamoto, M. P., Masuda, K., Yamada, K., Masuda, S., and Ohta, H.
    • 雑誌名

      Frontiers in Plant Nutrition

      巻: 4 ページ: 469-475

    • DOI

      10.3389/fpls.2013.00469

    • 査読あり
  • [学会発表] ネナシカズラの研究を始めるためにー播種・発芽・寄生実験・遺伝子解析ー

    • 著者名/発表者名
      若杉達也,山田恭司,古橋勝久
    • 学会等名
      日本植物生理学会第55回年会関連集会
    • 発表場所
      富山大学理学部(富山市)
  • [学会発表] ゴマ属植物の系統関係および種子成分の調査

    • 著者名/発表者名
      山本将之,飯間義毅,西本早織,若杉達也,増田恭次郎,山田恭司
    • 学会等名
      日本ゴマ科学会第28回大会
    • 発表場所
      富山大学理学部(富山市)
  • [学会発表] ゴマ祖先野生種Sesamum mulayanumの種子休眠性と遺伝マーカーの探索

    • 著者名/発表者名
      吉井 敦,岸本直之,種坂英次,山本将之,増田恭次郎,山田恭司,吉田元信
    • 学会等名
      近畿雑草研究会2013年度研究発表会
    • 発表場所
      近畿大学農学部

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公開日: 2015-05-28  

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