ダイズの二次通気組織の形成誘導には、胚軸部分が湛水状態になることと光存在下で葉由来のシグナルが胚軸に輸送されることの両方が必要であることが明らかになってきた。本課題では、葉由来シグナルを同定し、二次通気組織形成の誘導調節機構を解明することを目的としている。平成25年度の解析により、二次通気組織形成に重要な葉由来のシグナルの少なくとも1つは光合成産物であるスクロースであることを明らかにした。そこで今年度は、ヒートガードリングによって、師部を破壊した場合に、その部位の上側と下側で二次通気組織の形成に差異が生じるかどうかを調査した。その結果、ヒートガードリング処理をした部位の上側では二次通気組織が形成されたのに対して、下側では全く形成されなかった。これらのことより、葉において光合成によって生成されたスクロースが師部を通って胚軸に供給され、それがシグナルとなって二次通気組織の形成を誘導していることが示唆された。さらに、湛水条件下での胚軸におけるスクロース濃度を経時的に測定したところ、湛水処理を施すと胚軸内のスクロース量が増加することが明らかになったことから、胚軸内のスクロース量の増加が二次通気組織形成の促進に寄与している可能性が考えられた。今後、なぜ湛水条件下で胚軸内のスクロース量が増加するのかを解明するとともに、葉由来シグナルとしてのスクロースが、師部においてどのように遺伝子発現を制御し、二次通気組織形成を誘導しているのかについて解明する必要がある。
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