タンパク質性医薬品等の有用物質は、植物で生産することによりコストの低減が可能となる。その際、これら有用物質は植物にとって異物であり、その生育を阻害する場合が少なくない。したがって、植物体生育後、有用物質の生産を開始する 「光スイッチ」 を開発する。加えて、「乾燥スイッチ」 も開発も試みる。 ① 700-nm光制御遺伝子プロモーターPpsaA (PS I反応中心タンパク質遺伝子プロモーター) の作動評価:葉緑体における遺伝子発現モニター系を開発する目的で、CBRluc (赤色発光) とCBG68luc (緑色発光) のそれぞれの酵素タンパク質コード領域を700-nm光非制御遺伝子プロモーターPpsbA (PS II反応中心タンパク質遺伝子プロモーター) の制御下に置いた。これらの遺伝子DNAには、大腸菌中で高頻度に欠失が生じたため、経代を最小限に留めると共に低温で培養した。PpsaAの発現の700-nm光制御は 「抑制」 に働くため、CBG68luc のアンチセンスDNA をPpsaAの制御下に置くコンストラクトを完全化学合成した。これらのコンストラクトをパーティクルガンで植物葉に打ち込み、700-nm光照射による遺伝子発現を評価した。 ② 「光スイッチ」 の機構解明:光化学系レドックス制御に影響を与えると考えられる各種機能タンパク質に注目し、これらのシロイヌナズナ遺伝子破壊あるいは突然変異系統を実験に供した。阻害剤処理や700-nm光照射によりプラストキノン (PQ) の酸化還元電位を変化させた際のpsaA転写産物を定量することにより、制御機構の一端を解明した。 ③ 「乾燥スイッチ」 の開発:植物にとって乾燥ストレスは、水を吸収できないという観点において塩ストレスと類似する。シロイヌナズナを用い網羅的アクティベーション・タギング遺伝子探索を実施し、複数種の新規耐塩性遺伝子を見いだした。これらの知見を「乾燥スイッチ」 に応用する。
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