本研究は、昨今急速に普及しつつある人工転写因子(TALE)技術を利用し、遺伝子の(必ずしもプロモーター領域だけではなく)コード領域等を標的とした人工転写因子をデザインし、それに転写抑制ドメインSRDXを付加したTALE-SRDXキメラリプレッサーによって標的遺伝子の発現を抑制するシステムを構築しようとするものである。まず標的遺伝子のどの部位にキメラリプレッサーが結合すればもっとも効果的に転写抑制を引き起こせるかを検証するため、ルシフェラーゼ遺伝子をレポーター遺伝子として用い、コード領域の途中に読み枠がずれないように配慮しつつ酵母転写因子であるGAL4の結合領域を挿入したレポーターコンストラクトを作成し、GAL4-SRDXと同時にシロイヌナズナプロトプラストに導入してレポーターアッセイを行った。しかし、GAL4結合領域をルシフェラーゼ遺伝子の途中に挿入すると、実験系自体の成立が困難な程にルシフェラーゼの活性が大幅に低下することがわかった。そこで、最新のトレンドを鑑み、デザインや作成に手間のかかるTALEではなく、CRISPER-Cas9システムを利用して簡便なシステムが構築できないかを検証することにした。ガイドRNAに誘導されてDNAに結合することはできるが、切断活性のないCas9変異体(CAS9_D10A_H840A)にSRDXを融合した遺伝子を作成し、ガイドRNAと共発現するベクターを構築した。テスト実験として35Sプロモーターによってルシフェラーゼが発現するレポータープラスミドの各所にガイドRNAを設計し、CAS9_D10A_H849A-SRDXの効果を検証した。しかし、これまでのところ、レポーター活性の抑制は検出できていない。
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