土壌深度に応じで水分含量を段階的にコントロールするための改良灌漑装置の性能を圃場条件下で検証した。本装置は、昨年度鳥取県弓ヶ浜の砂質条件で行った実験において、全層灌漑区で過剰な水による養分流亡が起きたので、給水位置をチューブ先端のみから行い灌漑水量が均一となるように改良した装置を使用した。西オーストラリア州パース市の西オーストラリア大学農場において実験を行った。プラスチックハウス2棟に根の深さの異なる2品種の春コムギを栽培し、灌漑条件で開花期頃まで栽培した後、約2メ-トルおきに深さの異なるチューブを土壌内に挿入して異なる深さの灌漑を行った。灌漑は数日おきに手動で行い、灌漑強度に応じた距離ごとに定期的に1mの深さまでの土壌水分含量、SPAD値、気孔伝導度を測定した。また、完熟後地上部をそれぞれの場所から採取し、地上部乾物重、子実重を測定した。その結果、灌漑装置により全層に灌漑した区から灌漑位置が深くなる区にかけて徐々に土壌水分の勾配が得られた。SPAD値は後半にかけて明らかに灌漑深度が深いほど低下し、深根品種では浅根品種よりも値が低下しにくかった。気孔伝導度も徐々に灌漑深度が深いほど、根の浅い品種ほど低下しやすかった。完熟期の全乾物重は灌漑深度が深いほど低下し、深根品種は低下しにくい傾向があった。子実も同様の傾向が見られた。これれの結果から、本灌漑システムは圃場における深根性の異なる品種の違いを検出できることが明らかになった。
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