多くの花は,1日周期の開閉運動を示す.日中に開花し夜間に閉じるリズムは,受粉媒介昆虫の活動時間と関係したもので,日中だけでなく午後から夜にかけて利用される観賞用花卉としては,この開閉リズムは好ましくない.この研究では,開花時期を適切な時期にずらすことを目的として,花の開閉リズムの制御機構を明らかにしようとした. 異なる光リズムにおけるトルコギキョウ‘あずまの紫’の花の開閉の過程を,インターバル撮影により記録して調べた.異なる周期の明暗リズムで,花の開閉は明暗リズムと同調した.花の開閉運動は2段階からなった.第一段階は明期および暗期の開始とともに始まる花の開閉で,第二段階は明期の終わりから12時間後および明期の開始から2-3時間後に始まるゆっくりとした開閉である.第一段階は光による直接的な効果と考えられ,第二段階は概日時計による制御と考えられた.花の開閉リズムの光周期への同調は,24時間および20時間周期の青色光および赤色光の明暗周期においても認められた.光による直接的な開花効果は,青色光の光強度に依存した. 2.トマトの光受容体突然変異体における花の開閉リズム トマトの花も明暗周期に同調し,明期開始直後の急速な開花と,概日リズムによる開閉とを示した.phyA 突然変異体とcry1突然変異体においては,明期開始直後の急速な開花はみられず,明期開始後しばらくしてからゆるやかに開花した.連続明期においては,野生型は明期開始後1周期のみ開閉したのち開閉リズムは消失したが, phyB1-1,phyB2-1変異を含む突然変異体では約24時間の開閉運動を繰り返した.したがって,PHYAは,開花直後の急速な開花に関与し,PHYBは,光による概日リズムの同調を調節することが推測された.
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