研究課題/領域番号 |
25660022
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
山下 裕之 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (50590923)
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研究分担者 |
塩崎 修志 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (10235492)
望岡 亮介 香川大学, 農学部, 教授 (20221624)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 野生ブドウ / 休眠 / 種子 / 系統保存 / 葉 / アントシアニン / 形態 / レスベラトロール |
研究実績の概要 |
1.周年交配、実生育成法の確立:リュウキュウガネブを温室条件下で栽培し、3月~11月まで開花させ交配が可能となった。途中にせん定などで発芽時期をずらして周年交配ができるよう試みた。しかし、使用している雄株は温室条件下で一年中生育を続けたが、雌株は11月以降休眠に入り生育が停止したため周年交配はできなかった。 2.交配試験:リュウキュウガネブを種子親とした組み合わせでは、一才エビヅルを中心としての他4種類の生食用、醸造用栽培品種を花粉親として交配を行い、約200房、種子数で一房平均80粒を獲得した。また、本年はカベルネ・ソービニヨンを種子親として一才ヤマブドウを花粉親とする交配も行い、約50粒の種子を獲得した。 3.特性調査:交配により得られた種子は発芽率、実生生存率が低かった。得られた実生の中で芽の無休眠性、花芽分化を示す個体は認められなかった。種子休眠性に関しては、現地自然交配によるリュウキュウガネブから得られた種子では休眠が無いか短い特性を再確認した。 4.遺伝資源の収集と評価:本年は奄美大島、八重山諸島、種子島、屋久島、南大東島、沖永良部島、沖縄本島およびその近隣離島においてリュウキュウガネブ遺伝資源の現地調査を行い、その分布とその果実、種子、葉の特性を明らかにした。果実の特性では新たに大粒系(奄美大島、石垣島)2系統を発見した。果実内成分について、果汁の糖含量(Brix)、では特に高い系統は認められなかった。レスベラトロールに関しては知名瀬系統など大粒系2系統で高いことが確認された。果皮のアントシアニンに関しては今回の調査では特に高い系統は認められず、その組成は、マルビジン-ジグルコシド体をもつ系統が多かった。ただし,その組成割合は系統により異なっていた。 リュウキュウガネブの分布に関しては、種子島、屋久島ではリュウキュウガネブは確認できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.周年交配、実生育成法の確立:温度設定、供試系統を考慮すれば周年交配が可能であることが示唆され、開花期間に3ヶ月ほどブランクはあったが非常に多くの交配種子を得ることができた。 2.交配試験:本年はリュウキュウガネブを温度制御した温室で種子親として使用すれば充実した交配種子を通常の交配試験に比べ労力が少なくかつかなり大量に獲得することができた。 3.特性調査:2013年度は雑種実生があまり得られず十分な調査ができなかったが2014年度は大量の種子が得られたため芽や種子の休眠性や実生の幼若性などの特性調査がかなり進む。種子の特性に関してはリュウキュウガネブの自然交配種子から育種の効率化の観点から有益である休眠性の非常に短い種子が得られる事が明らかとなった。 4.遺伝資源の収集と評価:本年の調査から、リュウキュウガネブの分布に関して知見が増えた。特にこれまで曖昧であった種子島および屋久島のリュウキュウガネブの分布の有無を明らかにした。大粒性や種子の無休眠性など今後、重要な育種素材となる系統がより多く発見された。
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今後の研究の推進方策 |
1.周年交配、実生育成法の確立: 供試材料の雌株が冬季に伸長停止をする変異体であることがわかったため周年交配の試験は中止し、実生育成法(種子低温処理法、施肥などによる実生生育促進法の検討など)を中心に行う。 2.交配試験:引き続き一才性野生ブドウとリュウキュウガネブを中心として交配を行い、実生数の増加に努める。また、リュウキュウガネブを花粉親とし、醸造用ブドウや生食用ブドウとの交配を進め、実生を得る。 3.特性調査: 2013・14年度に得た実生を用いて芽の休眠性、幼若性、一才性の調査を進める。リュウキュウガネブを交配親とした2014年度に得られた種子の休眠性を調査する。 4.遺伝資源の収集と評価: 鳩間島などこれまで調査した地域以外に調査範囲を広げ分布を確認するとともに、穂木および果実の収集を行う。更にそれらから栄養繁殖体および種子繁殖体を育成して形質調査を行い、有用変異体の獲得に努める。 2014年度に分析に使用した果実は現地で採取したものであるため,熟度が均一ではなく,厳密な比較は困難であった。しかしながら,アントシアニン組成やレスベラトロール含量をみると系統間の特性比較はある程度可能であると考えられた。そのため2015年度は,奄美大島,沖永良部島以外のリュウキュウガネブ果実を採取し,そのアントシアニン組成やレスベラトロール含量を系統間で比較し,有用資源情報を得る。また,栄養繁殖体を育成し,少なくとも葉に含まれる成分,特にレスベラトロール含量やその合成能力の差異を系統間で明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入の際、僅かに残高が出てしまった。 次年度の請求額と合わせて物品購入する予定である
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の請求額と合わせて物品購入する予定である
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