種子繁殖型イチゴ品種の実用化には、種子発芽率の高さや安定性、発芽揃いが重要であるが、このようなイチゴの種子発芽特性に関する遺伝的な研究は進んでいない。本研究では、イチゴの種子発芽に関する遺伝要因の解明を目的として、自殖分離集団を用いた種子発芽諸形質の分離パターンの解析ならびにQTL(量的形質遺伝子座)解析を行った。本年度は、前年度に実施した培土播種による発芽試験に替え、シャーレ発芽試験を用いて、硫酸処理による種皮除去の効果、ならびに植物ホルモン(主にABA)処理の効果を調査した。 育種中間母本「0212921」の自殖第一代(S1)分離集団(C系統)の自殖種子を用いて、播種1~8週間後までの種子発芽率、発芽所要日数、発芽速度指標などの個体頻度分布を調査した。その結果、培土試験と同様に、シャーレ発芽試験においても、これらの形質値は分離集団内の個体間で連続的な変異を示すことが確認された。つぎに、これらの形質値とSSRマーカーデータを用いてQTL解析を行った結果、いくつかの有意なQTLが検出された。一方、今回のシャーレ発芽試験(コントロール区およびABA処理区)において検出された有意なQTLは、培土試験において検出されたQTLの位置とは異なっていた。以上のことから、通常の培土試験において種子発芽を制御するQTLとは別に、種皮除去下での発芽制御やABAによる発芽制御に関与するQTLが複数存在することが明らかとなった。
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