研究実績の概要 |
最終年度にあたる本年度は、果樹の生育相制御に関与することが明らかとなったmiR156・ miR172と花成制御との関連性について、一部の種が幼樹開花性を示すカンキツを用いて解析をおこなった。ともに多胚性であり、約30%の実生が幼樹開花性を示すグレープフルーツ‘マーシュシードレス’と、幼樹開花率0%であるナツダイダイを材料に用いた。実生と接ぎ木成木個体におけるmiR156・miR172の発現量は、miR156が実生で多く成木で少ない傾向を示し、miR172は実生で少なく成木で多かった。すなわち、両品種の実生および成木において、miR156・miR172の発現変動は同様の傾向を示した。このことは、グレープフルーツが示す幼樹開花性の誘導要因として、生育相制御は大きな影響を及ぼしていないことを示唆している。 本研究では、果樹の生育相制御において、micro RNAの一種であるmiR156・miR172が関与していることを示唆する結果を得ることができた。個体の幼木相と成木相の違いにmicroRNAが関与していることを明らかにした。さらに、挿し木発根の難易や着花部位から判断した、実生個体の樹体内の生育相分布と、miR156・miR172の発現量とも相関があることを示した。今後、miR156,172の発現制御により果樹の生育相を制御できる可能性が示された。一方、カンキツの幼樹開花性制御において、生育相制御機構が関与していることを示す結果は得られなかった。すなわち、グレープフルーツの実生には、花成を誘導しない幼木相の段階であっても、一年目に開花を誘導できる何らかの機構が存在することが示された。 以上の成果より、今後microRNAにより制御される相転換機構の人為的制御、さらには幼木相支配下で誘導されるグレープフルーツの幼樹開花性制御機構を明らかにすることで、新たな花成制御法を確立できる可能性が示された。
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