研究課題/領域番号 |
25660027
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
久保 康隆 岡山大学, その他の研究科, 教授 (80167387)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 果実成熟 / 低温誘導 / エチレン / 転写因子 |
研究概要 |
本研究は低温誘導をキーワードとして果実の成熟・落果と葉の紅葉、落葉を老化現象として一体的に捉え,共通する新規制御機構を解明しようとする先駆的取り組みである。多くの果実の成熟や葉の老化はエチレン誘導型制御系によって制御されていると考えられており、エチレンとは独立した制御系やエチレンの上位の制御系についてはRIN制御系を除いてほとんど解析されていない。その理由は研究の糸口となる現象や材料が乏しいことにある。筆者らはエチレンによって成熟するとされているキウイフルーツ果実の貯蔵技術研究の中で、「低温遭遇によってエチレンの作用なしに成熟する」という現象を発見した。昨年の解析によって,果実を常温で貯蔵した際に誘導されるエチレン生合成及びそれに伴う成熟・軟化は軟腐病によることが明確になり,罹病果実を適切に除去すれば、2か月以上の長期間にわたって,「未熟」状態を保つことが示された.さらに、キウイフルーツESTデータベース及びゲノム情報データベースから抽出された成熟関連遺伝子についてReal-time PCR法を用いて発現の確認を行った。その結果、NAC転写因子に顕著な低温誘導性を示すクローンを発見した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キウイフルーツESTデータベース及びゲノム情報データベースを活用して成熟関連遺伝子についてReal-time PCR法を用いて発現の確認を行った。その結果、NAC転写因子に顕著な低温誘導性を示すクローンを発見した.この因子の発見は、今後の研究の大きな展開につながると期待している. 当初計画では、キウイフルーツ果実とポプラ葉を比較検討するとしていた。ポプラ葉の低温応答性を切り枝を用いて解析しようと試みたが,乾燥が激しく,長期間の観察に適さないことが明らかになった.そこで,ミカン果実の着色も低温に応答する可能性があることに気づき,緑色果実を用いて調査したところ,10-15℃の低温に顕著に応答することが明らかになった.そこで、今後ミカン果実を材料に加えて解析を進める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
1.成熟・老化誘導に必要な限界低温遭遇条件の調査:キウイフルーツ果実と温州みかん果実を用いて数段階の低温条件および低温遭遇期間を設定し、低温誘導成熟様相を詳細に調査する。すなわち、成熟誘導に必要な限界低温温度および最低遭遇期間を決定する。また、エチレン処理に対する感受性の品種間差異についても調査する。 2.低温誘導成熟に関する品種間差異の解析:‘さぬきゴールド’はキウイフルーツの中では10月上旬に収穫される中生品種であり、低温貯蔵しても貯蔵期間は2か月程度である。主要品種である‘ヘイワード’は11月収穫の晩生品種で低温では6ヶ月以上の貯蔵が可能である。極高糖度新品種‘レインボーレッド’は9月中旬収穫の早生品種で貯蔵期間は1か月程度と最も短い。早生品種ほど低温感受性が大きいと推定されるので、数段階の温度条件を用いて低温誘導成熟特性の品種間差異を調査する。 3.Real-time PCR法を用いた成熟・老化関連遺伝子の発現解析:抽出された成熟関連遺伝子についてReal-time PCR法を用いて発現の確認を行う。Real-time PCR法では比較的簡単に多数のサンプルを解析することができる。そこで、数品種のキウイフルーツおよびミカン果実について数段階の成熟・老化段階および低温遭遇条件での調査を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
新年度にRNAseq解析を予定しており,この解析に活用する予定である. 昨年の残金も含めて,今期の解析に活用し,研究の進展を図る予定である.
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