研究課題/領域番号 |
25660030
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研究機関 | 公益財団法人岩手生物工学研究センター |
研究代表者 |
西原 昌宏 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 園芸資源研究部, 研究部長 (20390883)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フラボノイド / 3-デオキシアントシアニン / シンニンギア / 遺伝子工学 / 花色 |
研究実績の概要 |
昨年度、次世代シークエンサーを用いたRNA-seq解析を行い、イワタバコ科植物シンニンギア(Sinningia cardinalis)の花弁(白花と赤花)の遺伝子転写物情報を得た。本年度、アントシアニジン還元酵素(ANR)と相同性の高い遺伝子(ScANR-like1〜5と命名)を同定し、qRT-PCRによる発現解析を行った。全長cDNAの単離を試みた結果、ScANR-like1以外の遺伝子について全長配列が増幅されたため、4種類のバイナリーベクター(ScDFR,Sc5GTと共導入用)を構築した。また、コントロールとして3-デオキシアントシアニジンの蓄積に関与する可能性が示唆されているソルガムのANR-like遺伝子を有するベクターを構築し、トレニア白花に形質転換を行った。現在、形質転換体の解析を進めているが、ソルガムのANR-like遺伝子を有するコンストラクトを導入した系統で、花色の変化(クリーム〜薄褐色)と3-デオキシアントシアニンの蓄積が認められた。他のコンストラクトについても形質転換体の作出を進めている。また、フラバノン水酸化酵素遺伝子(F3H)抑制タバコの作出、本系統を用いた形質転換にも着手した。次年度、詳細に解析を行う予定である。なお、シンニンギアの白花の原因については、昨年度、カルコン合成酵素遺伝子(CHS)の発現差異によるものと推定されたため、プロモーター、イントロンの単離、シークエンスを行ったが、赤花と白花で配列に差は認められなかったことより、エピジェネティックな発現抑制の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、同定したトレニア白花品種(フラバノン水酸化酵素(F3H)、フラボノイド3′水酸化酵素(F3′H)、フラボノイド3′5′水酸化酵素(F3′5′H))を用いた形質転換実験において、3-デオキシアントシアニンの蓄積と花色の変化が認められた。これまで人為的に3-デオキシアントシアニンのエンジニアリングに成功した例はなく、今回が初めての例である。ただし、ソルガムの遺伝子を用いたものであり、シンニンギアの遺伝子による改変についても今後、関連遺伝子の探索と形質転換実験を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
シニンギア花弁からの3-デオキシアントシアニン生合成の鍵酵素の探索を進めており、これまで得られた候補遺伝子について、3-デオキシアントシアニン生合成に関与するか否かを追求する予定である。現在までに、ソルガムの遺伝子を用いて、花色の改変、3-デオキシアントシアニンの蓄積に成功しており、次年度、詳細な色素解析を行う予定である。3-デオキシアントシアニンの蓄積にはF3H遺伝子の抑制が必須であるため、ゲノム編集手法の適用も行い、最終的に遺伝子組換え手法を用いて3-デオキシアントシアニンを花弁に蓄積させる手法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
3-デオキシアントシアニンを花弁に蓄積するトレニア形質転換体作出には至ったが、タバコについては成功していない。最終年度にゲノム編集等のベクターを用いて、3-デオキシアントシアニンを効率的に蓄積させる方法を検討するため。その際、タバコ、トレニア植物の新規の形質転換、温室等での栽培、解析が必要である。
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次年度使用額の使用計画 |
候補遺伝子の解析、遺伝子組換えトレニア、タバコの作出、解析を実施する。
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