研究実績の概要 |
チューリップやユリの花弁では、萎凋や脱落が生じる前から、柔細胞においてDNAの断片化が生じ、プログラム細胞死(PCD)が始まっている。我々は、花弁柔細胞において早期からDNAの断片化を引き起こすヌクレアーゼ活性の特徴を明らかにし、ヌクレアーゼ遺伝子の同定とその制御に関する基礎的知見の蓄積を目指して研究を遂行した。 平成25、26年度では、チューリップ ‘イルデフランス’から柔細胞をサンプリングし、In-gel DNase assayによってヌクレアーゼ活性を検証したところ、分子量30kDa付近にバンドを認めた。さらに、花弁柔細胞において早期に働くヌクレアーゼ関連遺伝子の同定を目指し、チューリップ花弁では世界で初めてとなるEST(expressed sequence tag)の整備を行った。ESTデータベースを解析した結果、64,922のコンティグが得られた。アノテーションが得られたコンティグは59,998であり、ヌクレアーゼ遺伝子のホモログが少なくとも65含まれていた。ESTデーターベースをもとにアジレント社のeArrayプログラムを用いてプローブ設計とマイクロアレイを行った。 最終年度、マイクロアレイの結果をもとに花弁柔細胞で早期から発現が上昇するヌクレアーゼ遺伝子の候補として3種類のホモログを単離し、発現解析を行った。その結果、カルシウム依存性が報告されているStaphylococcal nuclease、CAN1遺伝子のホモログについて、花弁柔細胞では表皮細胞に比べて早期より発現が上昇していることが示された。一方、ユリ‘イエローウィン’の柔細胞ではS1typeヌクレアーゼ遺伝子ホモログの発現が柔細胞で上昇することを確認し、オープンアクセスジャーナルにて公表した(PLoS ONE:e143502, 2015)。
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