研究課題/領域番号 |
25660033
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
田中 福代 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター土壌肥料領域, 主任研究員 (50355541)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | エンドファイト / 品質 / リンゴ / 野菜 / エチレン |
研究実績の概要 |
植物は外的ストレスを受けると傷害エチレンを生産する.多くの場合傷害エチレンは過剰であるため,植物のエチレンレベルを低下させる生育や品質の向上が期待できる.そこでエチレンの直接の前駆物質ACCを分解するACCデアミネース(ACCd)活性を有する植物内生細菌(エンドファイト)を分離し,これを用いた作物の生育促進や品質向上の可能性を探ろうとしている. 25年度の研究内容と結果 1.エチレン生成量の少ないリンゴ樹におけるACC分解細菌の密度と果実のエチレン生産脳の関連.ACC分解遺伝子を持つエンドファイトは,各種処理のリンゴから検出された.またACCd遺伝子保有菌の密度と果実のエチレン生成量との間には明確な関係は認められなかった.以上から,エチレン生成量の低下はエンドファイトによる効果よりも,リンゴ樹自体の制御であることが推定された. 2.ACC分解エンドファイトの分離とACC deaminase活性の測定. 表面殺菌した果物や野菜類の断面を選択培地(ACCを唯一のN源とするDF培地)に30分載置後除去し、表皮の内側部位で生育した菌を分離した。ACC分解時に生成するα-ケト酪酸を比色定量することにより,分離菌株の酵素活性を測定した。選択培地からACC deaminase遺伝子(acdS)を有する可能性のある24菌株が分離された。そのうち、シュードモナス属の2菌株において高いACC deaminase酵素活性が認められた. 3. 生物検定. 分離した菌株を接種したリョクトウをACCを含む寒天培地に播種し、ACCから生成するエチレンによるリョクトウ胚軸のトリプルレスポンス(伸長阻害、肥大、カーリング)を計測した。ACC濃度は0,2, 及び10μMとし、30℃48時間、暗所で栽培後に計測を行った。複数の菌株で胚軸伸長阻害と肥大の軽減が認められ,特にシュードモナス属の1菌株で顕著であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リンゴ果実についてエチレン生産量の異なる試料を収集し,選択培地を用いた最確値法で密度を比較したところ,処理区間に有意な差は認められなかった.このため,エチレン生成量の決定要因はACC分解エンドファイトではないことが推定された, 一方,各種試料から選択培地上で生育する菌株を収集し,PCRを用いて目的の遺伝子を有する菌のスクリーニングやACC分解酵素活性の測定を行った.また,リョクトウを用いたエチレン生成阻害の検定法を確立した.これらの結果から,現在複数の有望株と,これからスクリーニングを行う30菌株を保有している.また,初めに分離した菌株について予備的に野菜類に接種試験を行い,成分分析までの一連の操作が確認できている. 以上のように,当初の計画通りに,仮説の検証と分離菌株の農業利用へ向けた基礎的知見の収集が順調に進行していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
26年度以降は,有望菌株の接種が実際にエチレンの生成を阻害するか,また,植物のエチレン関連の遺伝子発現や物質代謝やの変動に影響を与えるかどうかについて検討を行う.このため,いくつかの作物に対して接種試験を行い,作物成分の網羅的解析を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額14,121円の残額は、研究費を効率的に使用したために発生したものである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は,次年度に請求する研究費と併せて研究計画遂行のために効率的に使用する.
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