植物は外的ストレスを受けるとエチレンを生産する.多くの場合,ストレスエチレンは過剰に生産されることから,その生成を制御することにより,品質と生産性の向上を図ることが可能と考えた.その手段として,エチレンの前駆物質ACCを分解するエンドファイトの利用を検討した.また,耕地環境におけるACC分解エンドファイト密度とエチレン等ストレス関連物質の濃度の関連を評価した. 前年度までの概要:1)有機野菜等からACCを唯一の窒素源とする選択培地で生育可能な細菌エンドファイトを収集した.この菌株のうち,リョクトウ胚軸の伸長阻害の緩和を用いた検定や,ACC分解酵素活性から,Pseudomonas属の3菌株を,ACC分解能を有する菌として接種試験に供試することとした.2)MPN法により市販野菜(キュウリ,トマト,ニンジン)におけるACC分解細菌密度の相違を検討し,ロット間に差が認められた.3)リンゴ果実におけるACC分解細菌密度とエチレン発生量との関連は認められず,特異的にエチレン生成量が減少しているリンゴ樹におけるエチレン生成阻害要因はACC分解エンドファイトよりも,リンゴ樹の制御によるものと推定された. 今年度の概要:ニンジン種子に上記のエンドファイトを接種したところ,葉において香気成分の有意な変動があり,ストレス応答と関連する揮発性成分組成の変動が確認された.特に,2-ヘキセナールで顕著であった. 以上から,ACC分解細菌によるエチレンレベルの変化がストレス応答成分であるGLV (Green Leaf Volatiles)等の濃度に影響を及ぼしたものと推定し,そのメカニズムについて引き続き検討する予定である.
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