研究課題/領域番号 |
25660040
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
佐藤 令一 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30235428)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 昆虫 / 味受容体 / 宿主認識 / 小顋 / レーザーキャプチャーマイクロダイセクション |
研究概要 |
今期は以下の2点を実施した。 1.小顋味受容ニューロンのLCMによる採集とRT-PCRによる味受容体発現の確認 1)レーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)によりカイコガ幼虫の小顋の凍結切片からトルイジンブルーで染色された味受容ニューロンの単離を試みた。味受容ニューロンはブドウの房状に固まって存在したため単一細胞としての単離が完全にできた保障は得られなかったが、おおかた単離に準じたレベルで採集ができるようになった。2)採集した細胞からcDNAを調製し味受容体の発現の有無の確認をRT-PCR法で試みた。その結果、糖受容体と考えられているGr.7、8、9、10を発現する細胞が見られたが、その組み合わせには再現性が見られず、さらには苦み受容体と考えられているGr.14、15、16やGr.49、53、56などがコンタミして検出される例も多かった。すなわち、単一細胞が取得できていないか、それともLCMによる細胞採集からcDNAを調製に至るどこかの過程でコンタミネーションが起きていると考えられ、現在はこの問題の対応を検討中である。 2.味受容体のリガンド同定系の確立 1)既にリガンドがイノシトールであると報告されているGr.9を対象として、Baculovirus発現系でカルシウムインジケーターである発光タンパク質aequorineとこの味受容体を一緒に発現させたSf9細胞が本当にイノシトールへの反応を検出できるか否かを検討した。その結果、特異的な反応は検出できなかった。2)そこで次に、カルシウムに対する検出感度がはるかに高いとされているカルシウムインジケーターGCaMP3とGr.9をHEK293細胞に発現させた系を試みた。その結果、細胞はイノシトールに対して特異的に反応した。すなわち、これによりリガンド同定系が確立できたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「小顋の味受容ニューロンのLCMによる採集とRT-PCRによる味受容体発現の確認」に関しては技術的な問題に突き当たっている。目的を達成のためにはコンタミの理由の解明が必須な状況にあり、試行錯誤を繰り返している。一方、「味受容体の味リガンド同定系」は予想以上にうまく仕事が進んだ。よって、大方うまくいっているといえる状況にあると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は以下の点を集中的に検討する。 1.小顋味受容ニューロンのLCMによる採集からRT-PCRまでの間におけるコンタミのない操作法の確立と単一ニューロンの味受容体発現パターンの決定 味受容体 Gr.7、8、9、10やGr.14、15、16、さらにはGr.49、53、56が個々のどの味受容ニューロンで発現しているかを明らかにする目的で、コンタミの原因を究明し、再現性あるデータの取得を試み、単一ニューロンの味受容体発現パターンを決定する。 2.味受容体Gr.7、8、10およびGr.14、15、16等のリガンドの検討 まだ、それぞれの受容体がどのニューロンで発現しているかは未決定であるが、それらが小顋で発現していることは事実であると考えている。そこで、これらの味受容体のリガンドを昨年度確立したHEK293細胞のGCaMP3、Gr.9共発現系で明らかにして、それらの結果からカイコガ幼虫が味をもとに宿主(クワ)を認識するしくみの有無に関して考察する。クワの葉に含まれることが知られている2次代謝産物についても詳細に検討する。また、1細胞に同時に多種類の味受容体が味受容多細胞で発現している場合を想定した実験も実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
28,447円は微調整範囲であり、無理をせず残した。 28,447円は微調整範囲なので当初の計画の物品費の部分に組み込む。
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