研究実績の概要 |
1.カイコガ上唇の上咽頭感覚子にあるニューロンが発現する味受容体の解析 小腮粒状体にある味受容細胞のLCMによる単離がうまく行かなかったので,上咽頭感覚子にあるイノシトール細胞と苦味細胞のマニュピレータ―に取り付けたガラスキャピラリーによる単離を試みた.まず,カイコ5齢幼虫にメチレンブルーを注射し,神経細胞を染色した.次に,カイコ幼虫から上唇を取り外し,内側のクチクラを剥がして上咽頭感覚子直下の感覚神経細胞を露出させた.ガラスキャピラリーで吸引したところ,3個の感覚細胞がまとめて採取できた.3個の感覚細胞は何らかの構造物で束ねられており,単一細胞の分取はできなかった.しかし,これをスライドグラスに貼りつけると平面化して単一細胞が他の細胞と離れることがあった.そこで,その単一化した細胞をレーゼーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)により切り出した. その細胞に対してRT-PCRを行ったところ,味受容体Gr5,Gr6,Gr7,Gr9,Gr10,Gr63,Gr67が検出された.この操作を繰り返して行い,このような所謂糖クレードのGrをまとめて持つ細胞の存在に確証を得ようと試みている. 2.カイコガ味受容体糖クレードに属するGr5,Gr6,Gr7,Gr9,Gr10のリガンド解析 Gr5,Gr6,Gr7,Gr9,Gr10のcRNAを調製してアフリカツメガエル卵母細胞に注射し,受容体を発現させ,そこに糖を滴下して,電気生理学的手法を用いて応答を検出した.結果,Gr5,Gr6,Gr7発現細胞については応答が見られなかったが,Gr9発現細胞は既存の報告通りにフルクトースに応答した.一方,Gr10発現細胞はmyo-イノシトールとepi-イノシトールに応答し,Gr10の世界で初めてのリガンド確認となった.
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