研究課題/領域番号 |
25660042
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
冨永 達 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10135551)
|
研究分担者 |
大迫 敬義 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 講師 (80363969)
福永 健二 県立広島大学, 生命環境学部, 准教授 (50435533)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 外来雑草 / メヒシバ / エノコログサ類 / 分子マーカー / 在来雑草 |
研究実績の概要 |
外来雑草の農耕地への侵入は、作物生産に大きな負の影響を与えている。外来雑草のうち、ある地域に分布していた雑草が別の地域に侵入し、長い年月を経て、再び原産地に侵入する「里帰り」外来雑草は、同種の在来系統と外部形態が同じであるため識別が困難である。また、大型である場合もあり、在来系統と比較してより競争的である。さらに、在来系統と「里帰り」系統との間で雑種が形成されている可能性もある。このため、従来よりも防除が困難なケースが報告されている。 本年度は、「里帰り」系統の生育状況と在来系統との雑種形成の有無を明らかにするために、在来系統と「里帰り」系統を識別することが可能なマイクロサテライト(SSR)マーカーの開発を目的とし、メヒシバ属及びエノコログサ属雑草にターゲットを絞り、まず、宮城県、兵庫県、香川県及び福岡県の穀物及び飼料輸入港とその周辺でメヒシバ属及びエノコログサ属雑草を収集した。また、輸入港から遠く離れ、牛糞由来堆肥を使用していない長野県及び京都府の山間部の畑地からもメヒシバ属及びエノコログサ属雑草を収集した。輸入港周辺で採集した個体のうち、メヒシバと同属のDigitaria sanguinalisと推定される個体があった。このうちの50系統の葉から、全DNAを抽出し、塩基配列を決定し、SSR領域を増幅させるプライマーを設計し、いくつかのSSRマーカーを開発した。しかし、在来系統と「里帰り」系統を明確に識別することが可能なSSRマーカーを選抜することができなかった。現在、さらなるマーカーを開発中である。 収集してきたメヒシバ属及びエノコログサ属雑草のうち、前年度に袋かけ処理ができなかったそれぞれ20系統について袋かけ処理を行い、自殖系統を作出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国内4か所の穀物及び飼料輸入港とその周辺でメヒシバ属及びエノコログサ属雑草を収集することができ、SSRマーカーを開発することができた。しかし、在来系統と「里帰り」系統を明確に識別することが可能なSSRマーカーを選抜することができず、この点で当初計画よりやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度までに自殖させた系統を用い、開発したSSRマーカーからメヒシバ属及びエノコログサ属雑草の在来系統と「里帰り」系統を明確に識別することが可能なSSRマーカーを選抜し、「里帰り」系統の分布状況を明らかにするとともに、両者の雑種形成の有無を確認する。さらに、在来系統と「里帰り」系統の適応度を比較する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者が所属する研究室は、教員2名体制で運営されていた。しかし、1名の教員が交通事故にあったため、研究室の教員が研究分担者1名だけとなり、研究分担者の負担が大幅に増加した。そのため、供試材料の栽培と系統維持、DNA抽出用のサンプリングまでは遂行できたが、経費を支出予定であったその後の分子遺伝学的な解析ができず、当初予定した実験が計画通り進まなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究分担者が所属する研究室の体制が、教員2名体制に戻ることが決定し、研究実施に支障が生じない体制となる。昨年度、遂行できなかった分子遺伝学的解析用のサンプリングはすでに終えているため、昨年度実施予定の分子遺伝学的解析を含め、当初予定の研究を計画通り実施する。
|