外来雑草の農耕地への侵入は、作物生産に大きな負の影響を与えている。外来雑草のうち、ある地域に分布していた雑草が別の地域に侵入し、長い年月を経て、再び原産地に侵入する「里帰り」外来雑草は、同種の在来系統と外部形態が同じであるため識別が困難である。また、大型である場合もあり、在来系統と比較してより競争的である。さらに、在来系統と「里帰り」系統との間で雑種が形成されている可能性もある。このため、従来よりも防除が困難なケースが報告されている。 昨年度まで2年間にわたり自殖を繰り返した宮城県、兵庫県、香川県、福岡県の穀物、飼料輸入港とその周辺および輸入港から遠く離れ、牛糞由来堆肥を使用していない長野県と京都府の山間部の畑地で採集したエノコログサおよびアキノエノコログサについて、近縁のアワで開発されたマイクロサテライト(SSR)マーカーを利用して、在来系統と「里帰り」系統を明確に識別することが可能なSSRマーカーを選抜することを試みた。一部識別可能なマーカーを見出すことが出来たが、まだ不十分であった。 エノコログサ属と同様に収集し、自殖したメヒシバについては、いくつかのSSRマーカーを開発したが、在来系統と「里帰り」系統を明確に識別することが可能なSSRマーカーを選抜することができなかった。iPBSマーカーによる解析では、国内産系統と海外産系統を識別できる可能性が示された。 輸入港周辺で採集したメヒシバ属のうち、メヒシバと同属のDigitaria sanguinalisと推定される個体があり、これらが、在来のメヒシバと頴果の形状で識別可能であることを確認した。
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