研究課題/領域番号 |
25660045
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
太田 寛行 茨城大学, 農学部, 教授 (80168947)
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研究分担者 |
成澤 才彦 茨城大学, 農学部, 教授 (90431650)
佐藤 嘉則 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存修復科学センター, 研究員 (50466645)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 微生物間共生 / 土壌糸状菌 / 内生細菌 / 細菌ゲノム情報 / 糸状菌形質転換 |
研究概要 |
先に,土壌糸状菌Mortierella elongata分離株の菌糸内に細菌が内生することを見出し,糸状菌から内生細菌を除去する手法と内生細菌を物理的に分画する手法を開発して,内生細菌のゲノム解析をほぼ完了した.本研究課題は,内生細菌保有糸状菌株と除去株の性状比較解析,細菌側の内生に関わる因子の特定,さらに,糸状菌-内生細菌コレクションの拡大と有用内生細菌の探索を行い,内生細菌を利用して糸状菌の形質転換体を作出する基盤技術の確立をめざすものである. 平成25年度は,(1)糸状菌-内生細菌相互作用の解析,(2)内生細菌間の比較ゲノム解析,(3)糸状菌-内生細菌コレクションの構築を計画し,実施した.その研究実績は以下の通りである: (1) M. elongata FMR23-6 I-B1株由来の内生細菌のゲノム情報から,内生細菌のシステイン要求性に着目し,同様な性質を有するレジオネラ菌の分離培養培地を用いて,内生細菌の純粋分離培養に成功した.なお,継代培養には接種菌密度を高くすることが必要であり,クオーラムセンシング様のメカニズムが関わっていることが推察された. (2)すでに報告されている,病原性糸状菌Rhizopus microsporusの内生細菌Burkholderia rhizoxinica HKI 0454株のゲノム情報と,当方のM. elongata FMR23-6 I-B1株由来の内生細菌のゲノム情報の比較から,後者においてspermidine/putrescine transport system(ABC transporter)の存在が特異的であり,既存の文献によれば,この輸送系がクオーラムセンシングに関わることが推定された. (3) 畑地土壌から分離したN2O生成活性を有する糸状菌111株中の4菌株で内生細菌の存在が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
M. elongata FMR23-6 I-B1株由来の内生細菌のゲノム情報に基づいて,内生細菌の分離に成功したことは特筆すべき点である.この分離によって,内生細菌の糸状菌宿主依存性の解明が確実に一歩前進したと言える.
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今後の研究の推進方策 |
純粋分離に成功した内生細菌を簡易的にゲノム解析し,これまでの内生細菌画分のゲノム情報との比較,確認を行う.また,spermidine/putrescine transport system(ABC transporter)の機能の解明,新たに分離した内生細菌を保有する糸状菌の解析を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
純粋分離に成功した内生細菌のゲノム解析を新たに行う必要性が生じ,それを翌年度に行う計画である.その解析にかかる経費の補助として,旅費を縮小して、翌年度に回した. 純粋分離に成功した内生細菌のゲノム解析のための物品費として使用する.
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