研究実績の概要 |
平成26年度の研究実績は以下の通りである: (1)平成25年度の研究で,レジオネラ菌の分離培養培地を用いて,内生細菌の純粋分離に成功した(B1-EB株)。B1-EB株は好気性のグラム陰性桿菌で非運動性であった。16S rRNA遺伝子(1519 bp)のホモロジー解析で,最も近縁な株はBurkholderia thailandensis E264株で相同性は95%であり,本菌株は新属レベルの新種であることが推察された。以上の結果より,本菌株に対して新属新種Mycophilus cysteinexigensを提唱した。 (2) 内生細菌画分の解析から推定されるゲノム配列長は2,653,566 bp,G+C含量は46.1 mol%であった。分離したB1-EB株についてもゲノム解析を行い,ほぼ同様の結果を得た。B1-EB株のゲノムでは,119のファージ関連遺伝子と36のtransposase遺伝子の存在が特徴であった。また,真核細胞への感染に関わるとされるタイプIII型分泌系が存在し,内生細菌が糸状菌細胞へ感染する際にも本分泌系の関与が考えられた。さらに,殺虫性毒素遺伝子も検出されたが,その発現が実際に起こるのかどうかや,その発現が内生細菌-糸状菌の生態に影響するかどうかは今後の研究課題として残された。 (3) ケカビ目菌類104菌株を供試して,内生細菌を探索した結果,7株を分離することができた。それらはすべてBurkholderia属の細菌であり,そのなかには,ナガカメムシ類の腸内細菌として報告されているBurkholderia属細菌の近縁種が1菌株あった。本菌株については,カメムシ腸内と菌糸はどちらも栄養の分解吸収の場であり,そのような環境に適応したBurkholderia属細菌である可能性も考えられた。
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