研究課題/領域番号 |
25660050
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
竹迫 絋 明治大学, 農学部, 教授 (20206965)
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研究分担者 |
小沢 聖 明治大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40360391)
藤原 俊六郎 明治大学, 農学部, 教授 (80575473)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 陽イオン含有有機酸 / 洗浄法 / 粒度別137Cs分布 |
研究概要 |
本年度は福島県飯館村小宮地区、佐須地区において放射性セシウム(137Cs)による汚染度の異なる土壌を採取し、交換性陽イオン含有有機酸を用いる洗浄法により、土壌からの溶離法を開発することを目的に、プロトタイプの装置を作成した。本装置の使用に先立ち、使用する有機酸の種類や陽イオン種の選択について予備的検討を行った。方法は、桐山ロートに汚染土壌を50g充填し、各種試薬溶液をペリスタポンプにて500ml(1:10)滴下させ、処理前後の137Csのγ線量を測定し、その効果を判定した。結果は最も有望と想定していたシュウ酸アンモニウム溶液においてもほとんど効果が認められなかった。その後、クエン酸アンモン等を用いても効果が確認できず、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸等の有機酸や安定同位体Csを含有させた有機酸等によるバッチ法による溶離効果を検討したが、有効な効果は認められなかった。 そこで、汚染土壌中の放射性セシウムの存在場所や存在形態を明らかにするために、5段階の汚染度の土壌につき、水篩法、沈降法、遠心分離法による粒度の物理的分画を行い、各画分の137Csの分布を分析したところ、粗砂、細砂、シルト、粘土画分の順に濃度は高くなるが、高濃度汚染土壌ほどその格差は小さく、特に細砂、シルトには粘土画分と同程度に吸着されていることが判明した。 各画分の熱シュウ酸法による溶離率の検討では、砂、シルト画分は80%程度溶離されるが、粘土画分は20%以下で、シルト画分より大きな粒子には表面への吸着が想定されたが、粘土画分には内部構造に吸着されていることが想定された。 137Csの各画分への吸着力は極めて強く、イオン交換的な洗浄法による溶離は困難であるとの結果であるが、腐植物質を遊離させるアルカリ性試薬を用いた検討などさらなる溶離液の検討と、土壌中における吸着放射性セシウムの存在形態について検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的は汚染土壌からの低エネルギー(常温)、簡易装置(洗浄法)による放射性セシウムの溶離法の開発が目的であるが、放射性セシウムの土壌吸着力は極めて強く、本方法での洗浄・溶離はかなり困難であることが判明し、本来的な目的に対する達成度は低い。しかし、汚染土壌中の放射性セシウムが今までの通説である粘土画分、とくにイライト、バーミキュライトの端面や層間に固定されているだけでなく、砂、シルト画分の表面にも強い力で吸着していることを明らかにするなど、洗浄法での溶離を困難にしている汚染土壌中の存在形態につき新たな知見を得ており、研究の進行は順調に進行していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、進行中であるが、ピロリン酸ナトリウムなどアルカリ性で土壌中の腐植物質を遊離する試薬による放射性セシウムの溶離効果を検討する。また、汚染土壌の粒度別画分につき、熱シュウ酸による溶解・減量や粘土鉱物の組成変化等を検討し、汚染土壌中における放射性セシウムの存在形態(結合形態)を解明し、これに対応する新たな溶離法の開発を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
消費税等により4円の希少金額の残金が生じた。 次年度使用と合算し使用する予定である
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