研究実績の概要 |
環境場における多くの微生物は、未だに培養困難であり、その機能も不明なままである。難培養性微生物の培養技術や保存手法の開発は、未知微生物の機能解析及び遺伝子資源としての活用や、感染症の新規治療法の糸口に繋がり極めて重要である。そこで我々は、異種微生物同士が環境場において、未知の生育促進因子(情報伝達物質?)の授受をしていることに着目し、どのような化合物で相互作用しているか明らかにすることで、難培養性微生物の生態解明のブレークスルーになると考え、以前、活性汚泥より分離されたSphingomonas sp.GF9株が生産する、AST4、ASTN45及びASN212株に対する生育因子の単離・構造決定を目指した。 初年度は、NPB培地(1.0% Tryptone, 0.3% Yeast extract, 0.5% Glucose, 10 mM K-PO4 Buffer [pH 7.0], 4 mM MgSO4)をベースにTryptone並びにYeast extractの生産材料、生産メーカー、そして培地における濃度を変化させ、結果、改良NPB培地を決定した。つぎに温度や撹拌速度を検討することで、前後比で3倍の生産量を達成することが出来た。それに加え、丸菱社製100容ジャーファーメンターでの培養を安定的に出来るようになったために、絶対量で10倍以上の生産効率を達成した。 そこで次年度では、330リットルの培養物を調製し、そこから種々のカラムクロマトグラフィーを用いて生育促進因子の単離を目指したところ、いくつかの活性分画(HPLCにおいて単一ピーク)が得られた。質量分析機ならびにNMRによる分析で構造解析を行ったところ、AST4株はビタミンK2、ASN212株はポルフィリン類によって生育が促進されていることが明らかとなった。 興味深いことに、ASN212株はポルフィリン単独よりも亜鉛との複合体によってより強く増殖の促進作用を受けることも示唆された。
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