研究課題/領域番号 |
25660052
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
有岡 学 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (20242159)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マンナナーゼ / X線結晶構造解析 / シロアリ共生原生生物 / ヘミセルロース |
研究概要 |
シロアリ腸内原生生物由来マンナナーゼRsManCの発現と精製を行い、様々な基質に対する分解活性を調べた。その結果、RsMan26Cは4糖以上のマンノオリゴ糖、直鎖マンナン及び不溶性の結晶性マンナンをランダムに分解した。また、ガラクトマンナンとグルコマンナンに対しては直鎖マンナンの2倍を超える高い比活性を示した。RsMan26Cはその活性部位においてガラクトース側鎖を許容しやすく、マンノースとグルコースのヘテロ多糖を基質として認識できる緩やかな基質特異性を持つことが示唆された。 続いてRsMan26CのX線結晶構造解析を行った。精製RsMan26Cを用いてシッティングドロップ法により結晶の取得を行い、分子置換法により位相を決定し、精密化して分解能1.3Å、Rwork/Rfree=17/19%で最終構造とした。また、本来のネイティブ構造に加え、グルコマンナンの加水分解産物(グルコマンノオリゴ糖)との共結晶構造も得た。RsMan26Cの全体構造(ネイティブ構造)は典型的な (beta/alpha)8 TIMバレルで、他のGH26ファミリー同様に、活性中心残基やサブサイト-1においてマンノースを特異的に認識する残基などが保存されていた。一方、グルコマンノオリゴ糖との共結晶構造では、活性部位のサブサイト-5から-2にかけてグルコマンノオリゴ糖が結合していた。サブサイト-2にはマンノースのみが結合していたのに対して、サブサイト-4と-3にはマンノースとグルコースの両方が、サブサイト-5にはグルコースのみが結合していた。特にサブサイト-3では、Arg-126と、酸化されたメチオニン(SME85)がグルコースの特異的な認識にそれぞれ関与していることが示唆された。以上の結果から、RsMan26Cはサブサイト-5、-4、-3においてグルコースを許容または認識できることが示唆され、このことはRsMan26Cがグルコマンナンに対し高い活性を示す理由であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
RsManCとRsManHという二つのシロアリ共生原生生物由来のマンナナーゼの精製に成功し、その詳細な酵素学的性質を明らかにした。また、平成26年度に予定していたRsManCのX線結晶構造解析も前倒しで行い、その立体構造、および基質との共結晶構造を明らかにした。これにより、RsMan26Cがグルコマンナンに対し高い活性を示す理由が明らかとなり、シロアリ腸内に共生する原生生物の木材分解機構に関する理解が深まった。一方、GH10およびGH11キシラナーゼ、およびCE15に属するグルクロン酸エステラーゼについては予定通りその発現に着手した。酵母Pichia pastorisを用いた生産では細胞内での発現には成功したが、分泌生産が認められなかった。そのため、宿主として大腸菌を用いるなどの変更も試みている。
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今後の研究の推進方策 |
GH10およびGH11キシラナーゼ、およびCE15に属するグルクロン酸エステラーゼを始めとする様々なシロアリ共生原生生物由来のバイオマス分解酵素の発現とその性質解明に取り組む。優れた性質を持つ酵素群を選抜し、シロアリ由来の酵素を用いたバイオマスの酵素分解システムの構築を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
GH10およびGH11キシラナーゼ、およびCE15に属するグルクロン酸エステラーゼの酵母Pichia pastorisを用いた生産において、分泌生産が認められなかった。そのため、宿主として大腸菌を用いるなどの変更も試みているため。 平成26年4月から準備を始め、5月に発現プラスミドを作製し、大腸菌への形質転換を行う。6月以降、発現条件を検討し、発現に成功すれば、順次活性測定、精製、酵素学的性質の解明等を行う。大腸菌での発現に成功しなかった場合は、in vitroでの無細胞タンパク質発現システムを利用する。
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