• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

翻訳伸長初期における新規翻訳精度維持機構の提唱

研究課題

研究課題/領域番号 25660053
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関東京大学

研究代表者

長尾 翌手可  東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30588017)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワード遺伝子発現 / 翻訳 / tRNA
研究概要

本研究では、質量分析法とRNA単離法といった新しい技術を駆使し、タンパク質合成途中でリボソームから脱離(drop off)したペプチジルtRNAの細胞内プロファイリングやキャラクタリゼーションによって得られる知見を基にdrop offに関わるタンパク質・RNA分子構造を特定し、その機能を明らかにする。また、drop offが翻訳精度・効率に与える影響を検証し、新しい遺伝子発現調節機構の提唱を目的としている。平成25年度では、drop offに影響を与えるRNA分子として23S rRNAのペプチド脱出トンネルと16S rRNAの遺伝暗号解読中心を構成する塩基に着目し変異を導入したところ、23Sについては3つ16Sについては8つの変異体についてdrop offの誘発がみられた。このことから、翻訳初期においてぺプチジルtRNAはこれらのrRNA塩基と相互作用しリボソームに留まっていると考えられる。また、tRNA側の影響として修飾塩基に注目し、修飾塩基合成酵素欠損株を用いてdrop offの影響を調べた。合成酵素が既知である30種類の修飾塩基について調べた結果、アンチコドン領域の修飾では2つ、tRNAの3次構造形成に関わる領域に3つのdrop offを誘発する変異体を獲得することができた。今後はこれらの変異体に対して亢進しているぺプチジルtRNAを詳細に調べるとともにレポーター遺伝子を用いてその傾向を捉える予定である。翻訳因子についてはリボソームリサイクル因子であるRRFとそれに関連するEF-Gについて着目した。両因子とも必須遺伝子であるためこれらの温度感受性株を作成し、ぺプチジルtRNAを代謝するPTHの温度感受性形質をそれぞれ導入することに成功した。今後はこれらの株を用いてRRF、EF-G機能抑制下でのdrop offぺプチジルtRNAを解析する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

細胞内drop offぺプチジルtRNAを観察するためにはぺプチジルtRNA代謝酵素である必須遺伝子PTHを抑制する必要がある。当初の計画では平成25年度にRRF、EF-Gがdrop offにどのように作用しているかについての解析を完結する予定であったが、両因子とも必須遺伝子であり、その温度感受性株の作成から行う必要があった。更にPTHの温度感受性形質も導入する必要があったため、作成過程において株の生育能が非常に悪いものとなり各過程の条件検討に長時間有したが、現在はプラスミドによる形質転換など基本的な解析が行える目的株を得ることが出来ている。rRNA塩基の解析については当初予定していた変異導入可能な塩基ほぼ全てについて変異体を獲得しており、温度感受性能については解析済みである。tRNA修飾塩基については、非必須遺伝子として報告されている全てのtRNA修飾塩基合成酵素についてその欠損株にPTH温度感受性形質を導入した株を獲得し、その温度感受性能の解析は終了し、影響が出たものについては相補実験を進めている。本研究でdrop offに影響がみられたrRNA塩基、tRNA修飾塩基についてはこれまで特に表現型が報告されておらずそれらの機能を解明する初めての知見となることが期待できる。また、平成26年度に予定した翻訳精度・効率の観察使用する複数のエピトープタグを持つレポーター遺伝子発現系や出だしを様々な配列にしたレポーター遺伝子発現系セットを構築済みであり、これらを作成した株に導入しぺプチジルtRNAを観察することでdrop offの詳細なメカニズムを検証する予定である。

今後の研究の推進方策

平成26年度は平成25年度に得られたdrop off変異株を用いて、tRNA種ごとにぺプチジルtRNAを単離し解析を行いぺプチド部分が3残基以上のぺプチジルtRNAについての詳細な解析や、drop offが起きるコドンや出だしの配列を変えたレポーター遺伝子を各変異株内で発現させレポーター遺伝子由来のぺプチジルtRNAを解析することで各変異rRNAや修飾塩基を欠いたtRNAがもたらすdrop offペプチジルtRNAに与える影響について検証していく予定である。また、各変異株内でエピトープタグや配列特異的プロテアーゼサイトを導入したレポーター遺伝子を発現させ解析することで、翻訳の最終産物でタンパク質の合成量や合成精度に与える影響についても検証していく。翻訳因子については、平成25年度に目的の株を得ることが出来たので、平成26年度ではRRF、EF-Gの各因子を抑制した際に翻訳初期段階のぺプチジルtRNAがどの程度リボソームから脱離しているのかあるいはリボソーム内に留まっているのかなど、それらがどのような振る舞いをしているのかについて検証を進めていく予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] Quality control of protein synthesis by peptidyl-tRNA drop off in the early elongation stage2013

    • 著者名/発表者名
      長尾翌手可
    • 学会等名
      日本分子生物学会
    • 発表場所
      兵庫県・神戸ポートアイランド
    • 年月日
      20131203-20131206
  • [学会発表] 翻訳初期段階におけるペプチジルtRNAの脱落と校正機構2013

    • 著者名/発表者名
      長尾 翌手可
    • 学会等名
      日本RNA学会
    • 発表場所
      愛媛県・愛媛県県民文化会館ひめぎんホール
    • 年月日
      20130724-20130726

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi