研究課題
挑戦的萌芽研究
環境中の微生物は複数種が混在し、種の特性を反映した生体物質を異種間でやり取りしている。物質を介した相互作用は最も基本的な関係性で、どの微生物がどの物質の生産消費に関わるのかを解明すれば、生態系における微生物間相互作用の理解に直結する。しかし、環境微生物のほとんどは培養が出来ないため培養で細胞数を増やして解析する一般的な方法は適用できず、微生物間相互作用が起こっている局所的な微小空間の直接観測が望まれる。そこで本研究では、環境中から微生物を1~少数細胞だけ取り出し、細胞中のメタボライトを測定する方法を確立する事で、微生物間相互作用の解明を試みる事を目的とした。今年度は、難培養性の環境微生物の一例として、シロアリ腸内共生微生物群を対象とし、代謝産物情報の取得に必要となる条件検討を行った。いろいろなシロアリの腸全体から代謝産物を抽出し、代謝産物測定に必要なサンプル量や代謝産物種を確認した。さらに、シロアリ腸内共生微生物のうち、大型の原生生物に着目し、マイクロマニピュレーターを用いて1~少数細胞を取得し、代謝産物の抽出方法を検討した。特に、ムカシシロアリ(Mastotermes darwiniensis)の腸内共生原生生物であるミクソトリカ(Mixotricha paradoxa)からは、1細胞から70種類以上の代謝産物の情報取得に成功しており、一部の結果については学会等で発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、環境中の微生物の代表例である、シロアリ腸内の原生生物を用いて、シングルセルメタボローム解析を行う事が出来た。ただし、より精度の高い測定・解析を行うために、引き続き、系のカスタマイズを行う事が必要である。
今年度までに確立した代謝産物測定系を適用し、食餌や分布域の異なる複数種のシロアリの腸(全体・部位ごと)の代謝産物測定を行い、これを足がかりに、シロアリ腸内共生原生生物種ごとに集めた少数細胞を用いて代謝産物の差異を抽出し、共生系の中で各原生生物がになう役割を明らかにする。また、1匹の原生生物から、より精度の高い代謝産物の計測が行えるよう、引き続き代謝産物測定系のカスタマイズを行う。時間が許せば、シロアリ腸内共生系以外の環境微生物にも測定系が適用出来るか試行する。
研究の進展に併せて国際学会への参加申し込みも視野に入れていたが、国際学会での発表は次年度に持ち越すこととしたため。次年度に、研究の進展状況に合わせて、適切な時期に国際学会等での発表を行いたいと考えている。
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