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2014 年度 実施状況報告書

酵母のアセチル化酵素Mpr1による細胞内抗酸化系の新しい制御機構

研究課題

研究課題/領域番号 25660058
研究機関奈良先端科学技術大学院大学

研究代表者

高木 博史  奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (50275088)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードN-アセチルトランスフェラーゼMpr1 / 酵母 / アルギニン合成 / 酸化ストレス耐性
研究実績の概要

最近明らかにしたMpr1の立体構造に基づいて理論的な分子設計を行い、活性や安定性の向上した変異型Mpr1を取得するとともに、それらの構造機能相関を解析した。大腸菌を用いた組換え酵素としてMpr1を発現・精製した後、モデル基質であるL-アゼチジン-2-カルボン酸(AZC)を用いてin vitroで酵素活性を測定した。また、高温(50℃)処理後の残存活性により安定性を評価した。まず、CoAチオレートの安定化により反応を触媒するAsn178とその近傍にあるSer181をアニオン安定化能の高い残基に置換した変異型Mpr1、および基質のカルボキシレートを認識・結合するAsn135をアニオン結合能の高い塩基性残基などに置換した変異型Mpr1を作製した。これらの活性を測定したところ、野生型酵素に比べて著しく低下した。これは側鎖サイズの変化により正常な触媒反応が阻害されたためと考えられた。一方、N-acetyltransferaseには二量体形成が活性に重要である酵素も報告されている。Mpr1は溶液中で二量体を形成することから、二量体形成が活性や安定性に重要であると考えた。また、一般的に分子内相互作用はタンパク質の安定性を上昇させる。そこで、二量体の分子間表面かつ分子内ドメイン間に位置するAsn203にアミノ酸置換を導入し、分子間または分子内相互作用の強化を試みた。その結果、Asn203Lys-Mpr1は50℃における活性半減期が野生型酵素の最大約3.7倍に延長し、著しい安定性の向上が認められた。また、ネイティブゲルを用いた電気泳動の結果から、この熱安定性の向上は二量体形成の促進ではなく、分子内相互作用の強化に起因するものと考えられた。さらに、過去に取得した安定化型変異体(Phe65Leu)との二重変異体では、安定性が単独変異体よりも有意に向上した。また、各変異型酵素を酵母で発現させた結果、細胞内でのMpr1を介したアルギニン合成能の亢進が認められた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

立体構造に基づきMpr1の分子設計を行ない、安定性の向上した変異体の取得に成功するとともに、細胞内でMpr1を介したアルギニン合成が亢進されることが示された。この結果は、酸化ストレス耐性の向上にはMpr1の安定化が有効であることを示唆している。

今後の研究の推進方策

今後、アルギニン合成に関与する遺伝子破壊株を用いて、Mpr1の細胞内基質の同定を試みる。また、組換え酵素を用いて、グルタミン酸、プロリンをはじめArg代謝に関連するアミノ酸に対するN-アセチル化活性をin vitroで測定する。さらに、培養条件やストレス条件とMpr1の局在との関連を調べるために、GFPを融合させたMpr1を用いて、各条件によるMpr1の局在を蛍光顕微鏡にて観察する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 酵母に見出した新規な抗酸化酵素「N-アセチルトランスフェラーゼMpr1」2015

    • 著者名/発表者名
      高木博史, 那須野 亮
    • 雑誌名

      化学と生物

      巻: 53 ページ: 148-155

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 酵母の抗酸化酵素N-acetyltransferase Mpr1 の立体構造に基づいた機能向上2015

    • 著者名/発表者名
      平瀬冴華, 那須野 亮, 渡辺大輔, 高木博史
    • 学会等名
      日本農芸化学会2015年度大会
    • 発表場所
      岡山大学(岡山県岡山市)
    • 年月日
      2015-03-27
  • [学会発表] 酵母の酸化ストレス耐性に関わるN-acetyltransferase Mpr1の立体構造に基づいた分子設計と構造機能相関2014

    • 著者名/発表者名
      平瀬冴華, 那須野 亮, 渡辺大輔, 高木博史
    • 学会等名
      2014年度日本農芸化学会関西支部大会(第486回講演会)
    • 発表場所
      奈良先端科学技術大学院大学(奈良県生駒市)
    • 年月日
      2014-09-20

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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