研究課題/領域番号 |
25660059
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
川向 誠 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (70186138)
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研究分担者 |
松尾 安浩 島根大学, 生物資源科学部, 助教 (70596832)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | fission yeast / uracil / S. pombe / cell lysis / OMP |
研究概要 |
分裂酵母Schizosaccharomyces pombeのura4遺伝子を破壊した株は、ウラシル要求性を示すことや5-Fluorotic acidに耐性を持つことが知られている。Ura4タンパク質はde novo UMP合成経路において最も下流に位置しておりOrotidine-5-monophoshate(OMP)を脱炭酸反応によりUridine-5-monophoshate(UMP)に変換するOMPデカルボキシラーゼである。このura4遺伝子破壊株をYPD培地で培養した時に、定常期に達する細胞は溶解することを発見し、その原因を調べることとした。分裂酵母で見られる溶解は、出芽酵母のURA3変異株では見られないことから、何らかの代謝系の違いが考えられる。細胞溶解現象は、他種のS. japonicusにおいても観察されることから、細胞溶解はSchizosaccharomyces属特異的な現象である。まず始めに、LC-MSを用いて酵母細胞内の代謝物を測定した。その結果、YPD培地で培養したΔura4株にのみOMPが蓄積しており、出芽酵母のURA3破壊株では蓄積していないことがわかった。S. pombeと同様に細胞溶解を起こすS. japonicusにおいてはOMPの蓄積はみられた。また、ウラシルの添加によりOMPの蓄積量が減少した。細胞溶解が起こらないYE培地では、OMPの蓄積は認められていない。これらの結果より、OMPの蓄積と細胞溶解は密接に関係している可能性が示唆された。さらに、非必須遺伝子破壊株のライブラリー3400株を用いて細胞溶解の程度を評価した。これらの株はura4に変異が導入されているため、これらの株をYPD培地で培養し、アルカリフォスファターゼの酵素活性を評価することにより細胞溶解の程度を調べた。その結果、複数の株で細胞溶解が抑圧されている結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)ポリペプトンによる細胞溶解の原因の特定を行なうことを目的として研究を行なった。ポリペプトンにより細胞溶解を引き起こすura4破壊株を遺伝的バックグラウンドとして、分裂酵母で溶解を起こさないサプレッサー変異を取得することに成功し、それらサプレッサーが同定ができた。これらの解析から、細胞溶解メカニズムを解明につながる結果が得られているので、おおむね順調に研究は進展している。 2)ミトコンドリアの機能と細胞死の関係を調べることを目的として研究を行なった。細胞溶解しない変異体の中には、ミトコンドリアでのATP産生に関わるものが含まれていることが分かった。これらの解析から、ミトコンドリアの機能との関連する結果が得られたので、おおむね順調に研究は進展している。 3)cAMP関連の経路と細胞溶解の経路の関連性を調べることを目的として研究を行なった。細胞溶解の程度にcAMP経路の直接的な関与は認められなかったが、研究計画どおりに研究は推進できた。 4)マイクロアレーを用いた細胞死関連遺伝子のスクリーニングを行なうことを計画していたが、この研究は進めることができなかった。代わりにLC-MSを用いた代謝物の解析が進み、細胞溶解時に蓄積する代謝物を同定することができたことから、研究は順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
1)細胞溶解を誘導する物質の探索を行なっていく。特に、YPD培地中のポリペプトンに含まれる細胞溶解誘導物質の探索を行なう。ポリペプトンはカゼインタンパク質を酵素処理することで得られる低分子量ペプチドと遊離アミノ酸の混合物である。しかし、ポリペプトン中には各種無機イオンなども豊富に含まれている。そこで、YPD培地と同様に細胞溶解が誘導される培地の探索を行う。 2)細胞溶解はura4遺伝子破壊をYPD培地で培養した時、定常期で起こる現象である。ura4破壊株ではOMPからUMPを合成することができずウラシル要求性を示すが、外から添加したウラシルは、サルベージ経路でUMPが合成される。その時には、細胞溶解が起こらない。そこで、細胞溶解が起こる時と、起こらない時での、OMPの蓄積量をLC-MSを用いた代謝物の測定により調べていく。 3)細胞溶解を起こさないサプレッサー変異体の解析を行なう。分裂酵母の非必須遺伝子破壊株3400株をBioneer社より購入し、それらの細胞溶解程度を調べている。これらの株はura4変異を有しているため直接YPD培地に培養することでスクリーニングが可能であった。その結果、ある程度予想ができていた、ura1破壊株などに加え、アクチンを介した輸送に関与する因子end4(エンドサイトーシス), myo52(ミオシン)が細胞溶解を抑圧している結果が得られている。その他、ウラシルの取り込みを制御するタンパク質、ミトコンドリア機能関与するタンパク質などの関与が示唆されたことから、これらの因子の細胞溶解への関与を今後調べていく。 4)細胞溶解時に変動があるタンパク質の同定を行なう。Nano-LC-MS/MSを用いて、発現量が変動しているタンパク質の同定を試みていく。細胞溶解時に、顕著に変動しているタンパク質を調べ、どのようにそれらのタンパク質が関与していくかを調べていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験計画通りの使用を行なっていたが、比較的少額の次年度への繰越金が生じた。 繰越金は、本年度試薬品代として使用していく。
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