近年のメタゲノム解析等の手法の発達により、植物に共生する微生物の属・種レベルの解析が進み、葉圏では、Sphingomonas属細菌が約30%、Methylobacterium属細菌が約10%を含む、αプロテオバクテリアが優占化している。本研究ではこれらの主要な植物葉面共生αプロテオバクテリアが、植物にどのように認識されているかを植物の免疫応答や気孔開閉の観点から明らかにすること、特にSphingomonas属細菌については病原性細菌の植物上での生育が抑えられることから、そのプロバイオティック効果について機構を明らかにすることを目的とした。 まずSphingomonas属細菌の細胞は植物に免疫応答(活性酸素の発生)を引き起こすこと、鞭毛タンパク質あるいはその認識部位であると考えられるペプチドにも応答することが分かった。また鞭毛欠損株にもプロバイオティック効果があることから、植物はSphingomonas属細菌の鞭毛認識で免疫応答を起こすが、病原性細菌の抑制に直接関与していないことが分かった。 プロバイオティック効果には植物の非存在下でも起こることを見いだした。つまり寒天培地上でもSphingomonas属細菌は病原性細菌に対する生育阻止円を形成する。しかしこれは植物用の寒天培地でのみ起こり、通常の微生物用培地では起こらない。そこでSphingomonas属細菌の培養液のプロテオーム解析を行った。フラジェリン以外に、トランスフェリンドメインを持つ機能未知タンパク質が著量存在することを見いだした。これには鉄の結合性があると考えられることと、これまで変異株スクリーニングでプロバイオティック効果の無い変異株の多くはシトクロム酸化酵素に関連するため、鉄の関与がうかがわれた。すなわち、植物葉面共生細菌と病原性細菌の拮抗には鉄の奪い合いが重要な要素であることが分かった。
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