本研究では、日本の在来昆虫であるコガタルリハムシ(Gastrophysa atrocyanea)の幼虫および成虫が、水溶性シュウ酸を多量に含むヨーロッパ原産の外来雑草エゾノギシギシを選択的かつ旺盛に摂食する生活環に着目し、体内におけるシュウ酸分解と、腸内に共生する微生物の関連性を明らかにすることを目的として研究を行った。本研究の先行研究では乳酸菌の関与が示唆されたが、次世代シーケンサーを用いて改めて行ったメタ16S解析(平成26年度ゲノム支援事業)では、異なる地域において採集したコガタルリハムシ腸内フローラにおいて、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)が優勢的であることが明らかになった。また、採集地間の差よりも、飼育条件と野外条件において、腸内フローラを構成する細菌の種類が大きく異なっていた。一方、幼齢による顕著な差は見られなかった。さらに、コガタルリハムシの同属異種ハムシであるヨーロッパ原産のGastrophysa viridulaの腸内フローラについて解析したところ、同様に腸内細菌科が優勢化していたが、コガタルリハムシには見られない特定の細菌グループが定着していた。また、同試料を用いて行ったメタゲノム解析では、微生物のシュウ酸分解酵素の一つであるシュウ酸脱炭酸酵素(oxalate decarboxylase)の遺伝子が見出され、既知の腸内細菌科の遺伝子との相同性が高かったことから、G. viridulaの腸内において、腸内フローラを構成する細菌がシュウ酸分解に関与している可能性が示唆された。
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