研究課題/領域番号 |
25660068
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
仁木 宏典 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 教授 (70208122)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 共結晶 / ピルボイル酵素 / 補酵素A / 脱炭酸化反応 |
研究概要 |
パントテン酸は補酵素A(CoA)の前駆体で、この合成が止まるとCoAの合成は停止する。バクテリアではアルギニン酸の脱炭酸化反応を経て生じたベータアラニンからパントテン酸は合成される。この脱炭酸化反応はaspartate α-decarboxylase (ADC)が触媒する。ADCはピルボイル酵素として知られている。ピルバイル酵素は自己切断を起こし、その切断されたペプチドの末端にビルボル基が付加され、これが活性型酵素となる。これまで一般的にピルバイル酵素は自己的に切断されると考えられて来た。が、私達の研究から大腸菌では活性化因子のよってADCのペプチド切断が促進されていることを見いだした。この活性化因子PanZの切断の促進機構を解明する目的で、PanZと前駆体 ADCの複合体の構造を解明に取り組んだ。前駆体 ADCとPanZの共結晶から1.61オングストロームの解像度でX線の散乱データを取得し複合体の構造を明らかにした。PanZは前駆体 ADCに結合することで、前駆体 ADCは活性型へと構造変化を起こしていた。また、またPanZが結合した状態ではアルギニン酸の脱炭酸化反応を経て生じたベータアラニンを阻害することも構造的に明らかにした。活性化因子PanZは単にADCの切断を促進するだけでなく、この過程がADC活性制御機構としても機能していることが構造的にも示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
英国リーズ大学との共同研究により、高解像度の結晶構造が解明された。その結果、PanZによるaspartate α-decarboxylase (ADC)の活性化の構造的な理解が深まった。特にPanZの結合は自己切断を活性化するという正の機能だけでなく、これがADCの脱炭酸化酵素としての活性化を妨げるという負の制御があることを示した意義は大きい。これにより、ADCの酵素を阻害するための新たな着想を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
活性化因子PanZは単にADCの切断を促進するだけでなく、この過程がADC活性制御機構としても機能していることが明らかになりつつある。パントテン酸合成経路はCoAの合成を経て、最終的にはアセチルCoAの細胞量を調整することになる。アセチルCoAは代謝活性により変動することから、最終産物であるアセチルCoAがPanZーADC活性制御という最初の段階をフィードバック制御して細胞内のアセチルCoA量を調整し、その結果細胞の代謝活性を調節することが考えられる。事実、PanZはアセチルCoA基転移酵素と構造が類似し、アセチルCoAの結合活性中心を保存している。アセチルCoAによるPanZーADC活性制御を生化学と遺伝変異体を使い解析する。
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