研究課題/領域番号 |
25660075
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
木村 成伸 茨城大学, 工学部, 教授 (90291608)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 膜タンパク / 発現系 / シアノバクテリア / チラコイド / 膜移行シグナル / 構造解析 |
研究実績の概要 |
膜タンパク質は,細胞の物質輸送,シグナル伝達,エネルギー代謝などに重要な役割を果たしている。しかし,培養が容易な微生物を用いた遺伝子組換え型膜タンパクの大量発現系が無いことが,X線結晶構造解析等による膜タンパク質の立体構造解析や機能研究を困難にしている。本研究では,細胞内に発達した膜構造(チラコイド膜)を持ち,大量培養が容易なシアノバクテリア(ラン藻)を宿主に用いて,異種膜タンパクをチラコイド膜上に局在化・大量発現させ,単離・調製する方法を開発することを目的としている。本研究目的が達成できれば、膜タンパクの構造・機能研究に大きく寄与するだけでなく,シアノバクテリアの膜構造形成機構,光合成系タンパク質の合成と膜局在化機構などについての新知見も得られることが期待される。 平成26年度は,初年度に引き続きシアノバクテリアのチラコイド膜上に目的タンパク質を効率的に蓄積させるためのタンパク質膜移行シグナルの探索を進めた。チラコイド膜局在タンパク質の膜移行シグナルの有用性を確認するために,3種類のチラコイド膜局在タンパク質の構造遺伝子を単離し,検出用タグ(His-tag)を付加したシアノバクテリア用発現プラスミドを構築した。構築したプラスミドをシアノバクテリアSynechocystis sp. PCC6803に導入して,遺伝子の発現を免疫化学的手法により確認した。その結果,3種のうちの1種の膜タンパク質について遺伝子の発現を確認することができた。現在,チラコイド膜画分を分離して局在を確認中である。チラコイド膜への局在が確認できれば,この膜タンパク質のシグナル配列を付加した異種生物由来の膜タンパク質遺伝子の発現系を作製し,異種タンパク質のチラコイド膜上への発現を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度に始まった建物改修に伴う研究室の一時移転に伴う引っ越し作業の中断に加え,今年度は改修完了後の建物への研究室の移転作業があり,移転と移転後の実験室の環境整備に予定よりも手間取った。研究の一時中断の影響を最小限にとどめるよう努力したが,チラコイド膜画分調製のために必要な超遠心機に予想外の不具合が発生し,修理を要したことなどから,当初の予定よりも達成度がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の平成27年度は,当初の研究計画に対して達成度がやや遅れていることから,引きつづき本研究の核心部分であるシアノバクテリアのチラコイド膜への膜移行シグナルの探索を重点的に進める。チラコイド膜への発現タンパクの移行が確認でき次第,異種由来膜タンパク質のチラコイド膜への大量発現を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
建物改修後の研究室引っ越し作業,研究環境整備のための研究の一時中断が予定よりも長引いたため,研究遂行がやや遅れた。また,超遠心機の修理が年度をまたぐ可能性があったことから,修理費と修理後の実験に必要な消耗品費を次年度使用額として繰り越すことにした。結果的には年度内に修理が完了することができたが,修理後の実験に必要な消耗品費が次年度使用額として生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
修理が完了した超遠心機を用いた実験を含め,当初の実験計画の遅れを取り戻し,研究目的達成のために有効に使用する。
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