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2013 年度 実施状況報告書

微生物による発熱機構の解明と瓦礫発火の抑制および発電への応用

研究課題

研究課題/領域番号 25660077
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関名古屋大学

研究代表者

吉村 徹  名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (70182821)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワード発酵熱 / 藍 / Aspergillus / E. coli / ATP合成酵素
研究概要

堆肥の作製時に発酵熱が産生されることは古くからよく知られている現象である。稲わらや震災瓦礫などにおいては、時に自然発火が引き起こされる程の高い発酵熱が生成する。発酵熱は有機物の酸化分解に伴って生成すると考えられるが、あまりに自明の現象のためか発酵熱生成の詳細な機構についての研究はほとんどなされていない。本研究では、熱生成を制御する生化学的手法の開発を目的に、発酵熱産生の機構の解明を試みた。
本研究ではまず、藍染めに際して行う藍葉からの「すくも」作製時の発熱を発酵熱産生のモデル系として、発熱測定や発酵過程における菌叢解析および発酵熱産生に関わる微生物の単離・同定を行った。発熱測定には藍葉の温度上昇の計測とともに、けいはんな文化学術協会製の非破壊微生物活性計測システムAntares R(19試料同時計測)を用いた。菌叢解析にはPCR-DGGE法を、微生物の増殖評価にはリアルタイムPCR法を用いた。
その結果、発酵中の藍葉ではRhizopus属(真菌)、Aspergillus属(真菌)、Pantoea属(細菌)の近縁種が主に検出されたが、抗生物質存在下における発酵熱生成から、この系では真菌類が発酵熱生成に寄与していることが明らかとなった。また、異なる細菌種間の発酵熱を比較したところ、細菌の種類によって発酵熱を生成する能力(細胞あたりの発酵熱量)に違いがあることが示唆された。さらに、E. coliのATP合成酵素複合体の変異株を用いた発酵熱分析において、変異株は野生株に比べて発酵熱を生成する能力が高いことが示された。この結果より、ATP代謝が発酵熱生成と関連しており、特に電子伝達系の部分的な脱共役が発酵熱生成を促進している可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画した藍の発酵時の発熱に関与する菌の解析については、これが糸状菌、特にAspergillus oryzaeによることを明らかにした。発熱機構として、「発熱はATP生成に向かうエネルギーの脱共役により起こる」との仮説のもとに研究を進めて来たが、E. coliのATP合成酵素変異株を用いる事でこれを検証できた。以上の結果、「本研究はほぼ順調に進展している」と判断した。

今後の研究の推進方策

実際の藍生産での発酵では70℃付近までの温度上昇が起こるが、実験室レベルでは40℃程度までの温度上昇に留まった。本研究の目的の一つに発酵熱のエネルギー利用があり、そのためにはより高温を得る事が望ましい。そこで実験室レベルでの温度上昇が実際の藍生産時よりも低くなる要因について、容器の形状や発酵の規模などの物理的要因、菌叢変化など生物学的要因に分けて解析する。また論文作製のため、E. coliのATPase変異株の発熱解析に関する研究の再現性を検証し、特にリアルタイムPCRを用いた菌体量変化についてデータの精緻化を計る。

次年度の研究費の使用計画

本研究でもっとも経費がかかると予想される実験は、ATPase遺伝子の組み換えによる高発熱性微生物の取得にある。今年度の研究では藍葉の発酵における発熱機構の解析を主として行い、上記の実験については既報のE. coliのATPase変異株で入手可能な株を用いて行った。その結果本年度は同変異株を構築する必要がなかったため、次年度使用額が生じることとなった。
上記理由に記したように、26年度はATPase遺伝子の組み換えによる高発熱性微生物の取得を試みる。そのため、遺伝子操作用試薬・器具ともに、研究の状況によっては高発熱株スクリーニング用の装置、例えば赤外線カメラなどに経費を使用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2015

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 発酵熱の生成機構に関する研究2015

    • 著者名/発表者名
      西村佳祐、伊藤智和、高橋克忠、羽田亜紀、邊見久、吉村徹
    • 学会等名
      2014年度日本農芸化学会大会
    • 発表場所
      明治大学生田キャンパス
    • 年月日
      2015-03-27 – 2015-03-30

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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