研究実績の概要 |
生体内における硫酸化は、ステロイドホルモンや神経伝達物質および薬物等の解毒代謝機構として知られ、硫酸転移酵素(SULT)が関与する。これまでの研究から、硫酸化はフェノール性またはアルコール性の水酸基や芳香族アミンのアミノ基を標的とすることが知られている。我々はα,β-不飽和カルボニル化合物が硫酸化を受けることを見出し、その代謝機構の生理的意義、反応メカニズム解明を目的に研究を実施した。 新規硫酸転移酵素SULT7A1は環状α,β-不飽和カルボニル化合物を特異的に硫酸化し、シクロペンテノン型プロスタグランジンの代謝に関与すると考えられた。同じく、環状α,β-不飽和カルボニル化合物であるナフトキノンは幅広いSULTにより硫酸化を受けることが明らかとなった。 ナフトキノンをモデル化合物としてその硫酸化の反応機構を明らかにする目的のため、硫酸化反応産物の構造決定をNMRと質量分析により行った。また、ナフトキノン骨格を基本構造として持つ生体分子であるビタミンKの硫酸化を発見し、リコンビナントSULTを用いてビタミンKおよび関連化合物を基質として酵素学的な諸性質を検討した。 これらの研究を通じて、幅広い環状α,β-不飽和カルボニル化合物が硫酸化による代謝を受けることが確認された。これらの知見より、医薬品開発においてα,β-不飽和カルボニル基を有した医薬品候補分子の代謝機構として硫酸化を考慮した開発が求められることが示された。
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