研究実績の概要 |
ヒト因子由来再構成型タンパク質合成システムを樹立し、論文発表に至った(J. Biol. Chem. 289: 31960-31971)。このシステムに脳心筋炎ウイルスの2A2B領域をコードするDNAを投入すると2Aと2Bが分断されて合成されてきた。このことは2A2Bの分断には特別な因子を必要としていないことがわかった。翻訳終結因子eRF1, eRF3を除いてもこの現象が起こることから、2A2Bの翻訳終結・再開始はペプチド鎖伸長の際に起こることが証明された。 更にこの現象のメカニズムを解明するために、様々な変異を2A2Bの分断部位に施した。所謂NPGP配列(2Aの最後の3アミノ酸がNPG、2Bの最初のアミノ酸がP)をそれぞれAに変えると、NPGの場合(APGP, NAGP, NPAP)はいずれも分断が起きなかったが、NPGAでは分断は50%で起こった。NPGG, NPGSでも同様に50%で起こったが、NPGN,NPGLでは10-20%の分断率であった。このことは従来の考え方「プロリンの脱プロトン化が起こりにくいため求核攻撃が遅く、2Aペプチドの影響で活性化された水分子がPサイトにあるペプチジルtRNAのエステル結合を先に攻撃し、ペプチドが離れる」には合致しない。なぜならA(アラニン)やS(セリン)は脱プロトン化が起こりにくいことはないからである。 そこでクライオEMにより構造解析を行い、詳細なメカニズムを追究することにし、現在準備を進めている。
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