研究実績の概要 |
2A2Bの分断のメカニズムを解明するために、様々な変異を2A2Bの分断部位に施した。所謂NPGP配列(2Aの最後の3アミノ酸がNPG、2Bの最初のアミノ酸がP)をそれぞれAに変えると、NPGの場合(APGP, NAGP, NPAP)はいずれも分断が起きなかったが、NPGAでは分断は50%で起こった。そこでAだけでなく他のすべてのアミノ酸に置換するとNPGGやNPGQでも80%近くの分断率を示した。このことは従来の考え方「プロリンの脱プロトン化が起こりにくいため求核攻撃が遅く、2Aペプチドの影響で活性化された水分子がPサイトにあるペプチジルtRNAのエステル結合を先に攻撃し、ペプチドが離れる」には合致せず、新たなモデルの必要性が提示された。 更に、アミノ酸置換を2AのC末18アミノ酸にも施し分断率を測定すると、特に、疎水性アミノ酸のGへの置換が分断を阻止することがわかった。これは、リボソームのペプチドトンネルの疎水性部位との2A末端との相互作用の重要性を示唆している。 2A-2Bの分断メカニズムの完全な理解には構造解析が不可欠である。そこで、クライオ電子顕微鏡を用いて観察することにした。目下のところ、ヒト因子由来再構成型翻訳システムで2A-2Bを合成し、分断がぎりぎりで起こらない条件で、所謂アレストしたリボソームを精製しようとしている。サイトメガロウイルスのuORF2の配列(アレスト配列)を用いたコントロール実験では、リボソームとmRNAの像が観察されているが、新生ペプチドの可視化には至っていない。
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