研究概要 |
バイオ燃料電池は、酵素を電極触媒に利用し、糖などを代謝する過程において発生するエネルギーを電気エネルギーとして電極に取り出す。そして特に近年、安全かつクリーンな電源として注目されはじめている。しかしながら、その実用化には少なくとも越えねばならない2つの壁がある。ひとつは、発電の要である酵素をいかに電極に高密度に存在させるかであり、もうひとつは、酵素の触媒反応で取り出した電子をいかに効率良く電極に受け渡すかである。本課題では、蛋白質がその機能を保持したまま最も高密度化された状態であり、かつ、均一に配置された状態である酵素結晶を電極触媒として用いることにより、これら問題の解決を試みた。 まず、既にバイオ燃料電池として実績がある酵素であり、その結晶化条件が既知のアシネトバクター由来のグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)(結晶化条件:EMBO J., 18, 5187-5194, 1999; J Mol Biol., 289, 319-333, 1999)とバチルス由来のCotA ラッカーゼ(結晶化条件:Acta Crystallogr D Biol Crystallogr, 58, 1490-1493, 2002)を高純度に精製し、その結晶化を行い双方の結晶を得た。次にこれら得られた結晶の内、GDHの結晶を光硬化樹脂でカーボン電極上に固定し、そのグルコースの酸化に伴う電流応答を測定してその電極性能を評価した。この際、コントロールとして、結晶化せず限界まで濃縮した溶液状態の酵素を同様に固定化した電極も用意した。その結果、コントロールと比較して酵素結晶を使用した電極では5倍から10倍の電流応答を示すことを明らかにした。
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