本研究課題はバイオ燃料電池の実用化を目指してその飛躍的な高出力化を目指すものである。手法としては、バイオ燃料電池の要である使用酵素を結晶化して電極に固定することにより、その高濃度化、高安定化、また電極への電子のスムーズな移動の実現を試みるものである。 25年度には正極、負極に使用する酵素を結晶化し、それぞれの電極で5から10倍の電流応答を得ることに成功し、26年度には使用する酵素を高濃度のグルコースでも阻害がかからない変異体(AcGDH_I368A)に変更することによりさらなる高性能化に成功してきた。 27年度は昨年度までうまく結晶が得られていなかった正極に使用するラッカーゼの結晶化を引き続き行うとともに、昨年度すでにその結晶が得られたAcGDH_I368AのX線結晶解析を行った。その結果、ラッカーゼについては微結晶を得ることに成功し、さらに良質の結晶を得るためにその結晶化条件の検討を行うに至った。また、AcGDH_I368Aについては、分解能1.6Åでその構造決定に成功し、その構造を野生型酵素の構造と比較することにより、高濃度のグルコースによる阻害の緩和が起こるメカニズムを明らかにするに至った。さらに、その変異体酵素の構造をもとにバイオ燃料電池に適した、あらたな変異体酵素のデザインを行い、複数の変異酵素の作成、その評価を行った。その結果、高濃度のグルコースでも阻害のかからない新たな変異酵素2種の作成に成功した。
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