研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究は、微生物発酵等で行われてきた代謝工学の理論を高等植物に導入し、合理的な代謝改変を行って短期間に目的とする作物を開発することを最終目標とする。微生物などの単細胞生物で、代謝物数の少ない小さい代謝系を対象に用いられてきたフラックスバランス解析(FBA)やバイオケミカルシステム理論(BST)を、高等植物のゲノムスケールの代謝系に適用し、グルコシノレートなどの健康機能成分の生合成経路のボトルネックや不要な経路を予測して実験的に検証することを目的としている。平成25年度は、相対定量値として取得されるメタボロームデータを用いて代謝を数理モデル化するために必要な理論の構築を行い、モデル植物シロイヌナズナの代謝経路を対象としてBSTおよびFBAによって数理モデルを構築した。また、シロイヌナズナに代謝攪乱を与えたのち、代謝産物量の経時変化を示す時系列メタボロームデータを取得した。得られた時系列データを用いて、数理モデル中のパラメーターを決定し、さらにボトルネック予測などのシステム解析を行った。現状では、メタボロームデータの性質や植物代謝の特性に基づく検討課題がある。また、最終的にはゲノムスケールの解析を目指しているものの、現時点では対象とできる代謝の範囲が限られているなどの課題がある。そのため、現在も数理モデルの精度を上げるための検討を続けているところである。
3: やや遅れている
平成25年度は、安定同位体標識化合物を用いた代謝フラックス解析をおこなうことも予定していたが、研究室のメンバーに変更があったことにより、実験系を一部セットアップした段階で進捗が止まっている。
平成26年度は、進捗の遅れていた代謝フラックス解析を行うことを計画している。また当初は、メタボローム分析のためのオルガネラ分画法を開発してオルガネラごとのデータ取得を計画していたが、研究を進めるうちに、代謝産物量の絶対定量値の取得が我々の手法による数理モデル化にとって重要であることが分かってきたため、絶対定量値に準ずるメタボロームデータを取得するための技術改良に注力する計画に変更する。
物品費の端数の調整を特段行わなかったため、1,992円の次年度使用額が生じた。物品費として使用する計画である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)
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