研究課題
本研究は、微生物発酵などで行われてきた代謝工学の理論を高等植物に導入し、合理的な代謝改変を行って短期間に目的とする作物を開発することを最終目標とする。微生物などの単細胞生物で、代謝物数の少ない小さい代謝系を対象に用いられてきたフラックスバランス解析(FBA)やバイオケミカルシステム理論(BST)を、高等植物のゲノムスケールの代謝系に適用し、グルコシノレートなどの健康機能成分の生合成経路のボトルネックや不要な経路を予測して実験的に検証することを目的としている。平成26年度は、前年度に引き続いて、相対定量値として取得されるメタボロームデータを用いて、大規模な代謝システムを数理モデル化するために必要な理論の構築を行なった。代謝マップを元にバイオケミカルシステム理論に基づいて構築した数理モデルには、多数のパラメーター(速度定数、反応次数)が含まれる。このパラメーターの値を時系列メタボロームデータから推定する際に、パラメーターの数を減らし、またシステムの大まかな特徴を捉えるための理論(U-systemおよびPENDISC)を構築して2報の論文として発表した。また、シロイヌナズナに代謝攪乱を与える系として、薬剤添加により誘導される遺伝子過剰発現株および遺伝子機能破壊株を、北大の尾之内均博士との共同研究で確立した。一過的薬剤処理による時系列メタボロームデータを相対定量値として取得するとともに、アミノ酸については絶対定量値を取得してモデル構築を行なった。この過程で予想外の代謝変動を認め、現在、詳細な確認を行なっている。
3: やや遅れている
研究状況を鑑み、目的の達成によりふさわしいと判断される研究計画に変更したため。
研究実績の概要に記載した研究については引き続きモデル構築およびシステム解析を行なって論文発表する。また、新たに確立しつつある環境ストレスによる代謝攪乱の実験系を用いてモデル構築を行なう計画である。
本課題の目的の達成により適していると思われる実験系を確立したため、実験計画を変更した。そのために進捗が遅れ、未使用額が発生した。また、数理モデリング手法の改良を重ねたことで投稿予定の論文のひとつの執筆が遅れ、年度内の受理の見通しが立たなく立ったために、英文校閲代金および掲載料を年度内に支払う見込みがなくなった。
進捗が遅れている実験に使う物品の購入、および投稿論文の英文校閲と掲載料の支払いに充てる計画である。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
Bulletin of Mathematical Biology
巻: 76 ページ: 1333,1351
10.1007/s11538-014-9960-8
BMC Systems Biology
巻: 8 ページ: S4
10.1186/1752-0509-8-S5-S4