研究課題
植物から発散される香気成分の可視化を目的として,人工的条件下での霧化発散装置を用いて,水の有無による香気成分の発散量の大小を比較検討した.また,発散された香気成分にYagレーザーを照射し,粒子散乱に基づく粒子を検出し,その粒子径を計測した.昨年度、花から発散される香気成分の可視化に成功しなかった原因として、発散香気成分の濃度が不十分であったこと、香気成分-水会合体粒子の径が2 μm未満であり,検出装置の分解能に近かったことが挙げられた。そこで,本年度は観測位置を変え会合体粒子の成長を試みた。波長 532 nm の緑色光 Yag レーザー光の散乱を観測し、浮遊する粒子を計測するにあたり、蛍光を有する揮発性分子を複数用いた。水共存下、非共存下でその発散をアロマセンサー、GC-MSにより確認し,水共存下で発散量が高まることを確認した。特に、香気成分であるクマリンを用いた際、発散の再現性も高く,液滴の動きが観測され、水-香気成分会合性液滴の粒径を4-6 μmであると推定できた。昨年度に引き続き本研究により、人工的条件ではあるが浮遊する水-香気成分からなる会合体粒子の可視化を再現できた。次に、高濃度の蛍光性揮発成分クマリン発散を観察する目的で、クマリン前駆体であるo-ヒドロキシ-p-クマル酸グルコシドを合成した。花として青色デルフィニウムを選択した。クマリン前駆体化合物の合成は達成したが、投与実験には十分な量を確保できていない。また、合成完了時以降青色デルフィニウムの入手ができなかったため,本研究を次年度まで継続し、クマリン前駆体の蓄積、花への投与、レーザー照射による検出、画像化実験を継続する。
2: おおむね順調に進展している
花から発散される香気成分の可視化は達成されていないが,揮発成分の可視化は達成していること,当初予定していなかった,香気成分の前駆体を提案しこの合成を達成した.したがって次年度継続することにより,目的を達成しうる基盤をつくることができた.上記の理由により概ね順調に進展していると評価した.
クマリン前駆体であるo-ヒドロキシ-p-クマル酸グルコシドを100 mgを目途に合成し,青色デルフィニウムに投与する。合成法はすでに確立されており,困難な点は見当たらない.花として青色デルフィニウムを選択し,クマリン前駆体化合物水溶液を投与する.その際,前駆体の組織への取り込みの促進を目的としてサイトカイニンBAの共投与,あるいは,花における糖加水分解酵素の活性化を期待して酢酸ナトリウムを共投与する.BAはアマランサス子葉におけるL-チロシンの取り込みを促進し,ベタラインへの変換を促すことが知られている.また,酢酸ナトリウムの共投与により,花の糖加水分解酵素の活性化は研究代表者らによって確認している.発散クマリン量はダイナミックヘッドスペース法で捕集後GC-MSで定量する.クマリン発散量が最大となる条件を設定後,レーザーによる会合体粒子の検出,動的解析を試み,花から発散されるクマリンの動態を画像化する.バラは高濃度の香気成分を発散させることを確認したが,会合体粒子は検出できなかったことから,クマリン発散量としてはバラの香気成分発散量の10倍を目指す.
香気成分前駆体の合成とその投与実験を新たに計画し,次年度これを実践する目的でH27年度も使用する必要が生じたため.
以下の実験用消耗品の購入香気成分前駆体の合成試薬,ガラス器具,花(青色デルフィニウム) 香気成分捕集用モノトラップ
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
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http://www.ipc.shizuoka.ac.jp/~tnmase/watanabe_lab/
https://tdb.shizuoka.ac.jp/RDB/public/Default2.aspx?id=10746&l=0