研究課題/領域番号 |
25660092
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
吉田 綾子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所畜産物研究領域, 任期付研究員 (60610368)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / エキソソーム / 無菌マウス / 生体機能調節 / miRNA |
研究概要 |
腸管内に生息する腸内細菌は生体機能において重要な役割を果たしている。例えば、腸内細菌が存在しない無菌マウスにおいては腸管免疫系の発達が悪く、経口免疫寛容も誘導されにくい。一方で、プロバイオティクス研究にみられるように、体外から新たに微生物を投与することで生体の機能を調節できることも明らかになってきている。申請者も、プロバイオティクスの投与がマウス血液中の抗体応答を変化させることや、経口免疫寛容を強化することを明らかにしている。しかしながら、これまでのところ、腸内細菌やプロバイオティクスが腸管局所からどのようにして全身の免疫機能を制御しているかについては明らかになっていない。本研究では、最近、細胞間の情報伝達に関与することが報告された、分泌膜小胞「エキソソーム」に着目し、腸内細菌による腸管を介した生体機能の調節におけるエキソソームの果たす役割を解明することを目的として、腸内細菌を欠損する無菌マウスを用いた検討を行った。無菌マウスとSPFマウスの血液を採取し、エキソソーム濃縮用試薬を用いてエキソソームを抽出したところ、エキソソームの量が、SPFマウスと無菌マウスで異なっていた。さらに、エキソソームからmicroRNA を精製し、比較解析したところ、SPFマウスと無菌マウスにおいて血清エキソソームに含まれるmiRNAの割合が異なることが明らかになった。これらのことは、腸内細菌が血清中のエキソソームに影響を与えていることを示唆している。今後は、SPFマウスと無菌マウスからの血清エキソソームの移入試験を行い、それによる遺伝子発現制御の評価を行う予定である。また、SPFマウスと無菌マウスにそれぞれオボアルブミンを投与して得られる血清由来エキソソームの経口免疫寛容誘導能を移入試験を行い明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度の実験計画のうち、1.無菌マウスとSPFマウスのエキソソーム中miRNAの比較解析については実施し、腸内細菌によって血清中エキソソームに含まれるmiRNAの割合が異なることを明らかにした。平成25年度10月より、国立大学法人北海道大学大学院農学研究院から農業・食品産業技術総合研究機構・畜産草地研究所に転職したため、研究環境が変わったことにより研究推進に遅れが生じ、2.エキソソーム移入による肝臓および脾臓のmRNA 発現解析については、次年度に検討することとした。
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今後の研究の推進方策 |
無菌マウスとSPFマウスの血清由来エキソソームのmiRNAを比較したところ、含まれるmiRNAの存在割合が異なることが明らかになったことから、エキソソームによる遺伝子発現制御が腸内細菌の影響を受けている可能性が示唆される。そこで今後は、無菌マウスとSPFマウスからの血清由来エキソソームをマウスにそれぞれ移入し、それらによる遺伝子発現制御を評価する。また、無菌マウスとSPFマウスにそれぞれオボアルブミンを投与して得られる血清由来エキソソームの経口免疫寛容誘導能を移入試験を行い明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の実験計画のうち、2.エキソソーム移入による肝臓および脾臓のmRNA 発現解析については、期間途中に転職したため、研究環境が変わり実施できなかった。一方で、無菌マウスとSPFマウスの血清由来エキソソームのmiRNAの比較解析から、含まれるmiRNAの存在割合が異なることが明らかになっており、エキソソームによる遺伝子発現制御が腸内細菌の影響を受けている可能性が示唆される。そこで、エキソソームの移入試験については次年度に実施したい。 無菌マウスとSPFマウスからの血清由来エキソソームをマウスにそれぞれ移入し、それらによる遺伝子発現制御を評価する。
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