研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究は脂溶性抗酸化物のナノ粒子化とその生体内動態の解明を目的としている。本年度は、ナノ粒子に封入する脂溶性抗酸化分子として、ナノ粒子化に関する先行研究例が多いクルクミンを用いた。経口摂取したクルクミンのほとんどが生体内で代謝を受け、クルクミングルクロン酸抱合体に変換されることが知られている。しかし、ナノ粒子化がクルクミンの生体内で代謝転換などに与える影響は不明であるため、本研究では、ナノ粒子化クルクミンの調製技術を開発するとともに、肝臓の代謝酵素の影響についてクルクミンとナノ粒子化クルクミンの比較を行った。投与時の代謝調製Tween-80 や非イオン性界面活性剤(ポリビニルアルコール,PVA)を含む水溶液に、PLGA と脂溶性抗酸化分子を含むジクロロメタン溶液を添加・撹拌し、スクロース存在下で凍結乾燥することでナノ粒子を得た。系に存在するジクロロメタンはロータリーエバポレーターによって完全に除去した。得られたナノ粒子のクルクミン封入効率は作成条件で異なるが、約10~20%であった。ナノ粒子化クルクミンの代謝抵抗性を評価するために、in vitroでクルクミンとナノ粒子化クルクミンをそれぞれ10%ラット肝臓ホモジネートと反応させ、グルクロン酸、UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼの影響を調べた。その結果、抱合を免れて残った未抱合クルクミンの量は、ナノ粒子化クルクミンの方がクルクミンより有意に多かったため、ナノ粒子化クルクミンは代謝抵抗性が高いことが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度の目標は脂溶性抗酸化分子のナノ粒子化技術の開発であり、脂溶性抗酸化分子として、クルクミンのナノ粒子化をおこなった。作成条件を変えることで、異なる性質のクルクミンナノ粒子を得ることに成功し、動物への投与試験の条件は整った。よって研究は順調に進展していると言える。
H25年度はクルクミンのナノ粒子化に成功し、ラット肝臓ホモジネート使った試験では、ナノ粒子化クルクミンは代謝抵抗性が高いことが示された。そこで、ナノ粒子化クルクミンの生物学的利用能を明らかにするために、ラットへの投与試験を行う。すなわち、クルクミンとナノ粒子化クルクミンをラットに経口投与で与え、一定時間後に解剖し、血漿および各種臓器へのクルクミンおよびクルクミン抱合体の分布を調べる。
次年度使用額は年度末の納品が間に合わないため発生した。年度末の納品が間に合わなかった物品の購入に充てる予定である。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Food Chem
巻: 151 ページ: 126-132
10.1016/j.foodchem.2013.11.021.