研究課題
平成26年度は、脂溶性抗酸化分子を内包したナノ粒子による脳内到達と抗酸化効果の検証を行った。脂溶性抗酸化分子としては、当初計画から変更し、脳等で高い生理活性が期待されているクルクミンを用いた。クルクミンは通常の形態の経口摂取では代謝された形で血中に存在することが我々の研究で明らかとなっている。これらの代謝からクルクミンを保護したうえで脳内への移行量を増加させるためには、ナノ粒子の形状が血中に移行するまで維持されることが望ましく、少数ながら再現された報告がある(M. Guo et.al., 2013)。本研究では経口投与の経路で内包したクルクミンが代謝されずに血中まで移行されるナノ粒子の開発を達成するために固体脂質ナノ粒子に焦点を当て、in vitroでのヒト結腸癌由来細胞(Caco-2細胞)への吸収効果を検証した(Kakkar et. al., 2011)。結果、固体脂質ナノ粒子に内包されたクルクミンはエタノールやDMSOに溶解している群と比較して吸収されづらいことが分かった。しかしながら、エタノールやDMSOは細胞膜の浸透性・流動性を上昇させたりする吸収促進剤としての役目も担っており、食品由来のクルクミンが小腸に達した時の環境を細胞実験で再現できているとは言えない。以上の結果から、クルクミンのコントロール群を再度検討する必要があると共に、粒子の形状を保持しつつ細胞への吸収量を上昇させるための粒子のサイズ、材質の検討だけでなく細胞膜への接着のしやすさ、吸収部位での滞在時間の延長といった性質についても配慮しつつその現象を明らかにしていく必要があることが示唆された。
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