研究課題/領域番号 |
25660096
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
駒井 三千夫 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80143022)
|
研究分担者 |
後藤 知子 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00342783)
白川 仁 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40206280)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | アブラナ科植物 / 苦味物質 / 苦味受容体TAS2R / 解毒酵素GSTs / 遺伝子多型 / 苦味嗜好性 |
研究概要 |
発がん率の高い人ではアブラナ科植物に含まれるisothiosyanate類の苦味成分を受け入れないほど苦味感受性が高いことと、肝臓等でこの解毒化・無毒化する酵素の遺伝子多型の両方が関係しているものと予測される。この事を明らかにするとともに、こうした個人差の関連性を明らかにすることが本研究の目的である。 これまでの検討により、以下の知見が得られた。1)ブロッコリーは加熱によって苦味強度が変化すること(加熱 < 半量加熱 < 未加熱(生) )。2)アブラナ科植物のサンプルはクレソンで行うのが適している(苦味感受性:ブロッコリー < クレソン)。3)TAS2R38のSNP(一塩基多型)につていては、ハプロタイプのブロッコリーに対する苦味感受性は、PAV/AVI < PAV/PAV < AVI/AVI と分析された。 さらに、肝臓の解毒酵素については、TAS2R38の遺伝子多型の違いによるGSTM1とGSTT1の遺伝子頻度の2つとも「-」であるnull-タイプはAVI/AVIには0人、PAV/AVIは8人、PAV/PAVでは7人という結果であった。GSTM1とGSTT1が同じ割合であったが、AVI/AVIではGSTM1の割合が多かった。さらにGSTM1の有無だけで見るとPAV/PAVとPAV/AVIは等量あるにもかかわらずPAV/AVIは「GSTM1+」が多いことが明らかとなった。ノンテイスター(苦味感じない)はGSTM1を持っている人が多いのでGSTM1があるので解毒できる、すなわち味が苦く感じても身体の調子には影響がないものと考えられた。一方、テイスターまたはミディアムテイスターはGSTM1がない人に多いので(GSTM1がないと解毒できない)苦いものは控えようとする嗜好性になるかと思われるが、なお次年度の研究が必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)調理条件の違うブロッコリーのsulforaphane類の測定が始められたばかりである。2)Isothiocyanate類の苦み感受性の個人差の解析がまだであり、アブラナ科植物を解析後にアブラナ科植物由来のsulforaphaneを用いて苦味官能試験を行う必要性がある(gLMS法)。 3)被験者を増やしてTAS2R38の遺伝子多型解析を行う必要があること。これまでの先行 研究よりTAS2R38レセプターをターゲットとして解析する。途中までは解析が進められている。 4)TAS2R38の個人差とGSTM1及びGSTT1発現活性の個人差の関連性についての解析が途中であること。解析したTAS2R38の伝子型でisothiocyanate類を感じやすい人と感じにくい人に分け、それとGSTM1とGSTT1の発現量の高低の関係を調べ、まとめる。 これによって味嗜好の個人差と、GSTsの代謝機構からみたisothiocyanate類の嗜好性の 個人差に関連性があるか否かを判定する。
|
今後の研究の推進方策 |
1) Isothiocyanate類の肝臓代謝処理酵素(GSTM1及びGSTT1)の遺伝子多型解析: この例数を増やす。発がんの観点から、isothiocyanateが抗がん性のある物質と想定されているため、この酵素活性があまり高くない遺伝子型が肝臓等の臓器の脳への代謝情報としては「快」のシグナルとして内臓神経を介して脳へ伝えられるものと推定される。つまり、こうしたGST類の酵素活性の低い集団ではアブラナ科植物の摂取は多い(多く嗜好される)と考えられる。これを解析するために、同じ被験者を用いてTAS2Rsの場合と同様の手法でこの酵素の遺伝子多型解析を行う。 2) TAS2R38の個人差とGSTM1及びGSTT1発現活性の個人差の関連性の解析:こちらも例数を増やす。すなわち、25年度に解析したTAS2R38の遺伝子型でisothiocyanate類を感じやすい人と感じにくい人に分け、それとGSTM1とGSTT1の発現量の高低の関係を調べ、まとめる。これによって味嗜好の個人差と、Glutathione S-transferase (GST)の代謝機構からみたisothiocyanate類の摂食嗜好の個人差に関連性があるか否かを判定する。 3) isothiocyanate類のKeap1-Nrf2系を介した発がん抑制におけるメカニズムの解明:酸化ストレス応答タンパク質Nrf2は、細胞が酸化ストレスに曝露されるとセンサーKeap1が感知してKeap1-Nrf2複合体から遊離され、核へ移行し酸化ストレス防御酵素群の遺伝子発現をオンにして(ARE [anti-oxidant response element]を活性化)、酸化ストレスに対する生体防御反応を活性化する。肝細胞培養系で、3種のisothiocyanate類のARE活性化能を測定する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1)調理条件の違うブロッコリーのsulforaphane類の測定が始められたばかりであり、この経費が次年度に支払いになっている。 2)TAS2R38の個人差とGSTM1及びGSTT1発現活性の個人差の関連性についての解析が途中であり、多型解析装置の不具合があり、外注する都合からその分が次年度に繰り越された。 sulforaphane類のHPLC測定のためのカラム代と消耗品代、ならびに外注の遺伝子解析代に当てる。
|