研究実績の概要 |
近年、ヒト苦味レセプターTAS2R (25種類、GPCR) については、可食植物等に含まれ天然に存在する苦味物質のレセプターとのリガンド活性のあることが次第に明らかにされてきている。ブロッコリーなどのアブラナ科植物の摂取量が多い集団では肺がんや乳がんの発症率が低いという疫学調査が多く報告され(AAPS J, 16, 705, 2014; Breast Cancer Res Treat, 121, 195, 2010、等多数)ており、とくにアブラナ科に含まれるisothiocyanate類 (苦味物質) が有効な成分であろうと推定されている。このisothiocyanate類の主たる解毒機構である肝臓などにおけるmercapturic acid経路の最初の段階である、ヒトのグルタチオン-S-トランスフェラーゼ (GST) 酵素では遺伝子多型が頻繁に認められ、がんの発症に関与しているものと考えられる(Eur. J. Cancer, 46, 1617, 2010; Toxicol., 277, 74, 2010, 等多数)。そこで我々の想定としては、アブラナ科植物の苦味が嫌いな人で摂取量が少なくなることと、その肝臓での代謝酵素(解毒酵素)の発現量が少ない人では内臓感覚で嫌う人がいるだろうと考えた。 2年間の研究成果により、あるタイプのTAS2Raで、3つのアミノ酸の多型(SNP)で、アブラナ科植物の苦味と乳タンパク質分解物の苦味に対して遺伝的に分類できることを初めて示すことができた。また、苦味物質の肝臓での解毒酵素Aの遺伝子多型については、データ解析が途中であるために今後の解析が必要ではあるものの、苦味感受性の面からの遺伝子多型の分類はできそうにないことを示唆することができた。
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