研究課題/領域番号 |
25660097
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齋藤 忠夫 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00118358)
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研究分担者 |
西村 順子 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 技術専門職員 (10241556)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 乳酸菌 / セシウム / 細胞表層タンパク質 / フライドエッジ / ヒト腸管非付着性 / スクリーニング / セシウム高結合性 |
研究概要 |
平成23年3月の東日本大震災では、広島の約168個分に相当する90万テラベクレルの放射性物質が放出された。現在食品汚染として深刻なのはセシウム137 (Cs137)であり、食事からのCs137 の完全阻止は不可能であり、何らかの対策が急務である。我々は、これまでヒト腸管付着性乳酸菌の探索、選抜、そして高度利用を目指してきた。そのために、ヒト腸管付着性を評価するバイオセンサーBiacoreを用いた新しい評価法を開発した。この手法とこれまでの考え方を全く逆手に取って、「Cs137を強く細胞表層に吸着し、かつ全くヒト腸管付着性の無い乳酸菌」の選抜と「体内除染」という新しい視点での高度利用を目指すことを目的とした。 初年度の平成25年度は、当研究室の乳酸菌ライブラリー約700種と今後スクリーニングをする単離乳酸菌を、申請者らの開発したBiacore法でヒト大腸ムチンに対する結合特性を検討し、速やかにヒト腸管から排除される乳酸菌を選抜することを行った。その結果、ヒト糞便起源の乳酸菌には、やはりヒト腸管付着性の低い菌株は少なかった。一方、漬物などの植物発酵食品由来の乳酸菌には、ヒト腸管付着性の低い菌が多く見出され、その中でほぼヒト腸管付着性を示さない菌を10株程、特定することができた。来年度の平成26年度では、本年度構築されたライブラリーの中より、Csの結合せに高い菌株を見出すことができる、目途を本年度は付けることができた。 今後の予定としては、 選抜菌の中で菌体表層にCsを選択的吸着し、食事中のCsを消化過程で除去可能性の高い乳酸菌菌株を選抜する。さらに、選抜された高Cs付着性・ヒト腸管付着性の極めて低い乳酸菌を用いてヨーグルト等の発酵食品を作出し、その体内除染効果を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当研究室の乳酸菌ライブラリー約700種と今後スクリーニングをする単離乳酸菌を、我々の開発したBiacore法でヒト大腸ムチンに対する結合特性を検討し、速やかにヒト腸管から排除される乳酸菌を選抜することを予定した。実際に実験研究を実施した結果、まさに予想通りに、ヒト腸ムチン非結合性の乳酸菌を特定することができた。 しかし、実際にはヒト糞便由来の乳酸菌のライブラリーからは非常に少なく、漬物などの植物性起源の乳酸菌の方に、より多くのヒト腸ムチン非結合性菌が多かったとは、良く考えると当たり前だったのかもしれない。やはり、その乳酸菌の生育する環境を良く考えて、ライブラリーを絞り込むことの大切さを教えてくれた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の平成25年度は、概ね予想通りの実験研究の進展を見たので、本年度の平成26年度は、選抜菌の中で、菌体表層にセシウムを選択的吸着し、食事中のセシウムを消化過程で除去可能性の高い乳酸菌菌株を選抜すること、および選抜された高セシウム付着性・ヒト腸管付着性の極めて低い乳酸菌を用いてヨーグルト等の発酵食品を作出し、その体内除染効果を検証することに、まい進することを予定している。特に、本研究では、研究者の安全のために放射性の無いセシウムを使用しており、安全に実験を進めたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度はほぼ予定通りに実験研究が進んだが、多くの学会に出席して研究成果を発表するための学会への出席を「特許申請」などの関係で回避したために、とくに「旅費」などに関して予算を少し残してしまった。 本年度実施しなかった学会出席および発表などで、平成26年度の最終年度に予算を執行する予定である。
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