研究課題/領域番号 |
25660103
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
河合 慶親 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (50380027)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | DNA付加体 / 炎症 / マクロファージ / ミトコンドリア |
研究概要 |
核酸は遺伝情報を担うほか、細胞内外で情報伝達物質としても機能する一方で紫外線や発がん物質、酸化ストレス産物などによって修飾される。核酸塩基の修飾は遺伝子変異や発がんの原因として注目されてきたが、近年、修飾DNAが炎症誘導活性を有することが報告されつつある。しかし、核酸分子の感知・認識機構についてはほとんど明らかにされていない。そこで、本研究ではまず、内因性の新規修飾核酸の探索を実施した。酸化ストレスモデルとして脂質過酸化物に着目し、in vitroモデル反応における“アダクトーム解析”をLC-MS/MS分析法を用いて実施することとした。生体膜を構成するアラキドン酸と2'-deoxyguanosine(dG)を酸化条件下で反応させ、LC-MS/MSによりdG付加体の網羅的な解析を実施した。その結果、80種類以上の未知の付加体ピークを検出した。既知の付加体のうち、最も主要な2種(4-oxo-2-nonenal-dG、etheno-dG)については、安定同位体希釈法を用いることでDNA酵素消化物からの微量検出定量が可能となった。一方、未知の付加体のうち、アラキドン酸酸化により生じる2-オクテナールを介した付加体の生成が明らかとなった。この付加体は、2-オクテナールの4位の酸化を伴う新たな反応機構によって生じることが明らかとなった。このような網羅的解析法により、核酸の新しい内因性修飾を見出すことが可能となった。一方、マウスマクロファージ(J774.1)に対して、様々な低分子核酸の炎症誘導活性について評価したところ、ATPとアデノシン添加により、LPSによって誘導されるNO産生が顕著に促進されることが明らかとなった。またクロロ化アデノシンによっても類似の効果が認められたことから、修飾核酸の炎症誘導の可能性が示唆された。次年度はミトコンドリアDNAに焦点を当てた解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度においては、内因性DNA付加体の網羅解析をLC-MS/MS法を用いて実施し、脂質過酸化によって生じる2-オクテナールが関与する新規付加体の生成を見出した。また、ATPとアデノシンがマクロファージにおいて顕著な炎症促進作用を有することを明らかとした。26年度においてはミトコンドリアDNAに焦点を絞って付加体の炎症誘導活性を評価することを予定しており、25年度に得られたデータならびに実験条件は、これらの評価を行っていく上で非常に有用であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
26年度においては、引き続き内因性の新規DNA付加体の構造決定を継続するとともに、これら付加体による炎症誘導活性のスクリーニングを実施する。そのためには、各種モデル反応を実施し、DNA付加体を単離・精製する必要がある。また、ATPやアデノシンなどの核酸分子による炎症誘導機構について詳細な解析を進め、関与する受容体やシグナル伝達機構について理解を深めるとともに、より簡便な炎症誘導評価法を構築する。炎症誘導活性を有するDNA付加体を見出すことが出来れば、その受容体感知機構ならびに炎症誘導活性発現機構について詳細な検討を実施し、慢性炎症や各種疾病、老化への関与を議論するための知見を得る。
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