研究課題
挑戦的萌芽研究
神経系における母子間の物質的な相互作用が存在する。これまで我々は、主要な牛乳タンパク質alphaS1カゼインに由来するペプチドTyr-Leu(YL)およびTyr-Leu-Gly(YLG)が強力な情動調節作用を示すことを見出した。ヒト母乳タンパク質からも同様の神経調節因子が生成すると予想されるが、母乳中にはalphaS1カゼインは含まれない。そこで本研究では、ヒト母乳由来の新しい神経調節因子を探索し、その生理的意義の解明を目指す。ヒト母乳の主要なタンパク質ラクトフェリンを各種消化管酵素により消化しLC-MSを用いて神経調節ペプチド候補を分析した。その結果、消化管を想定した酵素条件、すなわち、ペプシン消化、次にパンクレアチン消化した際に、N末端側にYL配列を有する複数のペプチド断片が生成することを見出した。これらのペプチド断片を化学合成し、現在、各種行動試験により神経系に対する生理作用を評価中。
2: おおむね順調に進展している
ヒト母乳の主要なタンパク質ラクトフェリンを各種消化管酵素により消化したところ、神経調節ペプチド候補を複数見出した。
得られた母乳由来の神経調節ペプチド候補について、行動学的試験を実施し、それらの情動調節作用を検討する。
本年度、主に情動調節ペプチド候補の探索を行い、次年度、同定したペプチドについて大量合成し、機能性を検討することにした。新たに同定した情動調節ペプチド候補の機能性をマウス行動試験などで評価する。このため、物品費2,316,235円、旅費200,000円、人件費・謝金160,000円、その他200,000円の支出を予定している。