研究課題/領域番号 |
25660106
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
鈴木 卓弥 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (30526695)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インクレチン / 天然化合物 / 生活習慣病 |
研究概要 |
申請研究は、消化管上皮のGlucagon-like peptide-1 (GLP-1)分泌細胞(L-cell)を増加させる天然化合物を見出し、メタボリックシンドロームや糖尿病に対する新たな予防・治療方法を創出することを目指す。目的達成のため、本年度は次の2つの研究を実施した。 1.L-cell分化誘導刺激を持つ天然化合物のスクリーニング L-cellへの最終分化を決定する転写因子Pax6のプロモーター配列をクローニングし、ルシフェラーゼレポータープラスミドを構築した。本プラスミドを遺伝子導入したヒト消化管上皮Caco-2細胞において、約600種類の天然化合物(理化学研究所の化合物ライブラリーから入手した)のPax6プロモーター活性への影響を解析したところ、38種類の化合物に活性上昇作用が認められた。続いて、これら38種類の化合物によるPax6 mRNA発現上昇作用を解析したところ、2種類の化合物にPax6 mRNA発現上昇作用が認められ、特にEmodinに強い活性が確認された。 2.候補化合物によるGLP-1分泌増大作用の検証 1により選抜された天然化合物Emodinをマウスに摂食させ、耐糖能、GLP-1分泌への影響を解析した。経口グルコース負荷試験において、Emodinを摂取したマウスは、血中グルコース濃度の上昇が抑制される傾向を示すとともに、血中GLP-1濃度の顕著な上昇を認めた。 1と2の研究により、消化管上皮のL-cell分化を誘導する天然化合物の候補として、Emodinが見出され、生活習慣病を予防する新たな手段が提案された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請研究全体の具体的な研究内容は、1.L-cell分化誘導刺激を持つ天然化合物のスクリーニング、2.候補化合物によるL-cell数増加、GLP-1分泌増大作用の検証、3.候補化合物の病態改善作用の検証、4.ヒト臨床試験による候補化合物の作用の検証、5.L-cell分化誘導作用の分子メカニズムの解明、の5つである。 H25年度の当初の研究計画では、「1.L-cell分化誘導刺激を持つ天然化合物のスクリーニング」のみを実施する予定であったが、研究が順調に進捗したため、「2.候補化合物によるL-cell数増加、GLP-1分泌増大作用の検証」まで実施することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
研究は極めて順調に進捗しているため、H26年度も研究計画に沿って次の研究内容を実施する。 3. 疾患モデルマウスにおける候補化合物の病態軽減作用の検証 H25の研究により、消化管上皮のL-cell分化を誘導する天然化合物の候補として、Emodinが見出されたため、糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームのモデル動物を用いて、Emodinによる病態改善効果を評価する。方法として、高脂肪食摂取マウスや遺伝的肥満マウス(ob/obなど)にEmodinを摂取させる。生化学的、遺伝子学的、免疫学的解析を組み合わせ、候補化合物の病態軽減作用を解析する。さらに、有望な化合物について安全性・毒性試験(急性、亜急性など)を実施し、臨床試験への準備段階に入る。
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